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2030年の社会

「長期って、何年のことですか?」
「長期とは1世代、つまり30年~50年だと当機構は考えています」
先日ある学生から受けた質問に対する回答だが、なかなか良い質問だった。
世の中には「長期投資」「長期保有」と言いながら、3年とか5年で転売して憚らないファンドが、ゴロゴロいる。しかもそれが少数にとどまらず、けっこうな数になってきている。だから、素直な学生にはなにが本当の「長期」だかわからなくなってしまい、こんな質問が出てくるのだろう。

さわかみグループには「時の審判」という言葉がある。
時代の流れや勢いに乗るだけでも、3年や5年なら成功出来ることはある。だが、それだけでは、30年や50年成功し続けることは、決してない。本物の金は50年経過しても金だが、金メッキは数年すればはがれてしまうのと同じことだ。「時の審判」とは、いわば本物か偽物かを誰の目にも明らかにしてくれる、時に残酷だが公正な審判のようなものだ。
この「時の審判」に、30-50年という「長期間」耐えてきた企業が、当機構が承継して次世代に残そうと取り組んでいる「子や孫の未来に必要な会社」だ。
こういう企業は、強く、たくましい。なぜなら、生活に密着している分野で、時代の流れに対応しながらも決して時代に流されることなく、長年工夫を積み重ねて事業を行ってきているからだ。流行りのITとかAIのベンチャー企業とは無縁だし、将来的にIPOして脚光を浴びることもないだろうが、市民の日々の生活をコツコツと支え、サービスを提供し、雇用を生み、税金を納めるという、大切な役目を担っている。こういった中小企業を長期的に残していくためには、ある程度の幅で未来を予測しておくことも必要だ。だから、当機構では、将来社会がどうなるかを随時研究し、またその想定を定期的にアップデートしている。

たとえば、2030年の社会はどうなるか? 多くの資料等を基に当機構では複数の想定をしているが、「2030年 ジャック・アタリの未来予測」(プレジデント社)はとてもよい参考文献だった。たとえば、同書からいくつかを引用して当機構の想定を表すと、下記のようになる。

・生活水準:世界のGDP/人は過去45年間ずっと改善し続け、過去70年で3倍になった。世界の生活水準は足元でも改善を続けており、10年後はいまよりもっとよくなっているだろう。ただ、日本では同数値はほとんど伸びておらず、今後も労働人口の減少により伸びは見込みにくいため、相対的に世界における生活水準は落ちそうだ。すなわち、日本の消費市場としての魅力は減るが、労働力としての魅力が増加することになるだろう。

・平均寿命:世界の平均寿命は過去50年間ずっと改善し続け、47歳から71歳に51%も伸びた。だが、足元では米国やフランスでマイナスになってきている。日本でも、平均寿命の延びは減速傾向にあるため、いままでほどは伸びなくなるだろう。人員不足が常態化している医師の高齢化による減少と、国民皆保険制度が破綻して医療費が賄えなくなる可能性が日々高まっていることに鑑みると、次の10年で日本人の寿命が短命化することも十分あり得る。少子化とあわせて、日本の人口減は世界史上見たことの無い規模で、加速度的に発生することになるだろう。

・環境:世界の気温上昇ペースは、100年間に1度から10度に上がっている。その結果、台風が増加・巨大化しており、昔は10年に1度と言われてきた巨大台風が、毎年のように起こることになるだろう。インフラ対応よりも早いペースで台風が増える結果、水害の増加も避けられない。また、水や農地の奪い合いが現実になってきており、食料生産は(人口増にもかかわらず)前年比マイナスになる年が出てきている。水・食料の奪い合いは主に大陸諸国において、古くて新しい争いのタネになるだろう。日本においては、水と農地は世界から隔離されているために比較的安定的だが、中国など他国から狙われ、侵略されるリスクは年々高まる(すでに水産物では略奪状態に近い)。台風が巨大化して北上する結果、これまで台風に対する対策が取られていなかった地域(例:北海道)での災害は増え、コメの収穫量等も影響を受けやすくなるだろう。

・民主主義: 自国内しか対象にしない民主主義は、地球規模の社会では機能しないことが明らかになってきている。民主主義はピークを過ぎて世界各国で後退しており、10年前とくらべて、民主化が後退した国の数(105)は世界の半分に相当する(民主化が進展した国の数(61)を大きく上回った)。自国主義の高まりから、貿易障壁の強化や貿易摩擦の拡大は避けられず、日本でも、世界中に分散してきたバリューチェーン戦略の見直しを迫られる企業が増えてくる。日本の良質な労働力が相対的に安価になってくることや、新興国での治安悪化もあり、日本に工場や拠点を戻す企業が増えるだろう。

・資本主義:近視的にしか機能しない資本主義は、長期的な繁栄とは矛盾することが明らかになってきている。世界の富の偏在は、上位1割が9割の富を握る歴史的な臨界点に近づいており、残された9割が不均衡に怒り、飢えに耐えられなくなったとき、デモや革命・戦争が頻発するだろう。その暴動を富む側が力で抑え込もうとすれば、破滅的な結果になる可能性もある。私的でちっぽけな幸福追求に執着するなら、滅亡シナリオが現実味を帯びてくるだろう。

・対策:「次世代のために行動できるか」次世代のために行動できれば、人類はさらに進化できる。自己尊重をするのは構わない。が、今後は、世界のために「も」行動することが必要な時代になるだろう。

あなたはどう行動するだろう? 私的でちっぽけな幸福追求に執着し続けるだろうか? それとも、次世代のために「も」行動するだろうか子や孫の未来を考えることは、あなた自身の未来を考えることでもある。とはいえ、いきなり「次世代のために行動せよ」と言われても、何をしたらよいかわからない方々も多いだろう。だから、当機構は「次世代のために行動する」ことを、誰でも簡単に参加できる仕組みにして、労働参加、資本参加等、様々な形でご提供している。
当機構はまだまだ小さな存在だが、1人集まれば1人分、100人集まれば100人分、共に活動することでその影響力は大きくなり、それだけ世の中を良い方向に変えられる力になる。今後、より多くの方々とともに、「次世代のための行動」を拡大していけることを、心から楽しみにしている。

 

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