MESSAGE

よくある質問③ 私に何が出来ますか?

2021年の6月から7月にかけて、当機構の兄弟会社であるさわかみ投信の意見広告が、全国主要紙で数回掲載された。紙面では、「今だけ、カネだけ、自分だけ、でいいのか?」「カネは大事だが、それ以上に大事なこともあるのでは?」「カネを、理想を実現するための手段として使ってはどうか?」といった、行き過ぎた資本主義・拝金主義に対する強烈なメッセージが、実直かつ簡潔に述べられていた。読まれた方々からも、「とても共感した」「心に響いた」という感想を、多数お聞きした。きっと、多くの人たちが、いまの資本主義の歪みに違和感を感じており、その人たちの心に響いたのだろう。

そしてこの点は、事業承継問題でも同じだ。
中小企業は、日本経済を土台として支えている。そしてその雇用は人口の7割、付加価値の5割を担っている。その中小企業の廃業を放置しておけば、日本が土台から崩れるということは、これまでも何度も書いてきたとおりだ。ただ、資本主義の「カネカネ」の世界では、事業承継問題のうち、わずか2%しか解決出来ない。「自分のカネ」だけを求める人々にとっては、事業承継問題はカネにならないから、カネになる2%にしか取り組まないのだ。ここで、合成の誤謬が生じる(合成の誤謬とは、個々の判断としては一見正しくとも、集合としてみると誤った結果になり、結果として個人としても誤った判断になってしまうことだ)。

資本主義の中で、多くの人や企業が「自分のカネ」だけを求めている。だから、カネにならない中小企業の98%には取り組まず、これらの中小企業は廃業や倒産を余儀なくされている。だが、98%の中小企業がこのままなくなってしまうと、日本の雇用の7割、付加価値の5割が消えることになる。「自分のカネ」だけを求めている人はどうなるか?(あるいは自分には関係ないとタカをくくっている大企業の人たちはどうなるか?)当然、無傷では済まない。いや、無傷では済まないどころか、致命傷を受ける可能性だってある。このまま中小企業の廃業を放置すれば、まず大量失業による雇用不安で、社会が不安定化する(国民が食えなくなると、反乱や一揆、政権転覆が起こる。それは、歴史が度々教えてくれている事実だ)。
また、人口の7割を占める被雇用者が失業者になれば、日本が誇る国民皆保険制度や年金制度は、あっという間に維持できなくなる(国の制度が維持できなくなる時、そこに勤め先による差はない)。さらに、大きな税収源を失い、失業手当等の増加を余儀なくされる結果、日本の国家財政破綻の時期は大きく前倒しされてしまうだろう。
大企業の事業自体も、バリューチェーン崩壊による影響を受ける。それまで自社を支えてくれていた、下請けの中小企業がいなくなるからだ。その影響が、原価の向上等を通じた利益の減少で済めばまだましだが、そもそもバリューチェーン自体が維持できなくなる可能性も大いにある。
また、7割の人口が収入を失えば、それだけ大企業の製品やサービスの消費者が減る(中小企業の7割の人も、大企業にとって大事な「消費者」「お客様」だ)。その消費者が貧すれば、広範な業種で売上が大きくかつ永続的に減ることになる。ここまで書けば、何がおこるか、想像するのは難しくないだろう。つまり、中小企業の事業承継問題を「自分のカネにならないから」と、このまま放置しておけば、その影響はすべての日本人に間違いなく及ぶのだ(そして、最もその影響を受けるのは、子や孫の世代だ)。だが、「カネにならないから」と、事業承継問題はこれまで20年以上放置されてきた。そして、このままの「カネカネ」では、今後20年以上経っても放置され、時間切れになってしまうだろう。

事業承継問題の全面的な解決のためには、(カネも必要だが)カネ以外も求める、新たな仕組みが必要なのだ(だから、当機構はソーシャルビジネスとして設立され、活動している)。そういう意味でいうと、事業承継問題は、環境問題や格差問題と同じSDGsの問題だと言える。SDGsの問題は全て、「今だけ、カネだけ、自分だけ」を追求しすぎた資本主義の結果生じている問題であり、またその姿勢を変えないと、解決できない問題だからだ。その中でも事業承継問題は、特に難しい。「環境」や「格差」といった、国際的、世界的に「見える化」している問題ではないため、国連レベルの取組はなされていないからだ。
いわば、事業承継問題は、高齢化最先進国の日本で起こっている、局地的なSDGs問題なのだ(世界の高齢化の結果、事業承継問題もいずれ必ず世界的な問題になる。ただ、まだ多くの人に見えるようにはなっていない、ということだ)。さわかみ投信からのメッセージは、その解決のための「姿勢」を遡及しているから、人々の心に響いたのだろう。

では、あなたに何が出来るか?小さな一個人として、いったい何ができるのだろうか? 答えはカンタンだ。あなたのおカネをどう「投資」するか、「運用」するかを考えるときも、他の行動をするときと同様に、あなたの良心に従って行動すればよい。ただ、それだけだ(だが、それは難しいのだ)。目先の利益のために、クジラを絶滅させて良いのか? 自国のために、他国の人や未来世代が住めないような環境にしてよいのか? 自分のことだけを考え、他者が非人間的にしか生きられない格差を放置してよいのか? 先祖のおかげで裕福に暮らせている現世代が、子や孫の未来を考えなくてよいのか? 自分には小さなことしかできないと諦め、出来ることすらしなくてよいのか? これらの質問にYesと答える人は、ごく少ないだろう(多くの日本人はそう答えるだろうと、信じている)。
だが、「投資」「運用」となると、人はついカネカネになってしまう(私の自省も含めて・・・)。これは、人間の本能だから、仕方ない。だが、その本能を抑制し、コントロールするために、「理想を追うこと」「企業を応援するという姿勢を持つこと」「仲間とともに行動すること(集団効果を得て自制すること)」という方法は、ある。さわかみ投信は上場株運用の分野で、その仕組みを20年超に亘り提供してきた、ダントツの先駆者だ。そして当機構も、非上場の中小企業を対象にした「ソーシャル運用」という仕組みを、まもなく提供できる見込みだ。

私が好きな相場格言に、こんな言葉がある。「株(stock)を買うときは、靴下(socks)を買うように買いなさい」
投資だから、運用だからと、特別な行動をしないことだ。靴下と買うときのように、投資し、運用する。ただ、それだけでよいのだ。

そして、大事なことがもう2つ。
1.やるべきだと思ったら、すぐに第1歩を踏み出すこと
(人は変化する位なら自殺するというくらい、変わりたがらない生物だ。物理的にも、たとえばロケットが飛び立つ最初の10秒には、その後10年間飛び続ける以上のエネルギーがいるのだ。まず第1歩を踏み出すことは、とても大切だ)
2.ゆっくりでもいいから、決して後退せずに、続けること
(毎月積み立て/定期投資という仕組みは、本能を自制するよい仕組みだ)

当機構における「ソーシャル運用」についても、2021年の8月後半から9月前半には、金融庁への正式な登録を経て開始できる見込みとなった(詳しくは、正式な登録後に、HP等で別途ご案内します)。初期からご参加頂いている支援者の方々には長らくお待たせしてしまっているが、当機構の活動が本格的に拡大する日は、もうすぐそこまできている。その日が来た時には、多くの良心ある皆様にも支援者/投資家としてご参加いただき、皆様とともに日本の事業承継問題を全面的に解決するための活動を拡大していけることを、心から楽しみにしている。すべては、子や孫に未来を残すために。

 

関連記事

TOP