当機構は、一般個人がインパクト投資を通じて、社会貢献しながら資産運用することが出来る「事業承継未来ファンド」を運用している。2021年8月に金融商品取引業者登録を行い、2021年9月に1号ファンドの募集を開始してから、約5年間で10号ファンドまでが既に成立して運用を開始しており、延べ150名程の方にご参加頂いている。
個人向けファンドの累計残高は約4億円程であるが、この4億円は単なる利回りを産むだけの投資ではない。今日の社会と、子や孫の未来を支える、大きな力になっている。当機構の過去の実績から見ると、ファンド投資約1.5億円で1社の事業承継を成立させることが出来ており、年6億円の経済と、30人の雇用を維持するのに役立っている。日本の世帯当たり人員数を考慮すると、概ね60人の生活を支えていることになる。
さらに、国や自治体に年1億円超の税金を納め、地域の社会システムやその安全を維持する貴重な財源を提供している。また、同程度の年金や社会保険料を毎年納め、日本の健康保険や年金といった社会保険制度の維持にも寄与している。
数字に出来るものだけでもこれだけあるが、数字に出来ない効果もある。たとえば、当機構が承継した会社の約6割は製造業であり、主にB to Bの黒子として部品や製品を供給することで、大企業に貢献している。その中には、大企業のサプライチェーンの重要な部分を占めている企業もある。もし同社が廃業していたら、大企業の製造ラインがストップし、ある大企業の製品が世の中から消えてしまうほど重要な役割を担っている企業もある。B to Bの黒子の企業が多いため、一般消費者の目に触れることはあまりないが、あたかもお城を支える石垣のように、地味ながら欠かすことの出来ない土台となって、日本の製造業を支えているのだ。
また、ある企業では、当機構が承継する前から保有する空き地を、地域の子供たちが自由に野球やサッカーを出来る場所として提供し、維持管理している。近隣の学校の運動会の時に会社の駐車場や水道・トイレ等を無償で貸し出し、さらに社員が一部ボランティアでその運営まで手伝っている会社もある。地域社会に積極的に貢献し、共生しているのである。
もし上場企業で同じことをやったら、どうなるだろう?「そんなのは無駄だ!ボランティアなどせず、効率よく稼げ!」とか、「空いている土地は売却して、もっと配当をよこせ!」という株主が出てきて、大問題になるかもしれない。また、サラリーマン社長では、その圧に屈せざるを得ず、たとえ個人的に維持したいと思っても、なかなか難しいかもしれない。
だが長い目で見た場合、企業が地域に積極的に貢献し、交流することで、企業の評判は高まる。それは、企業の信用向上につながり、ビジネス面はもちろん、人材の採用や、社員が誇りを持って活き活きと働ける職場であること等を通じて、大きな効果を長期的に複利で生んでくれる。だから当機構では、承継した後も、承継前に創業者が大事にしていたことは基本的にそのまま大事に引継ぐ。一見無駄に見える事でも当面の間は変えずに、長期的に見てから判断することも多い。
こういった有形無形の社会貢献効果を生みながら、かつ年4%を目標として資産運用にもなるインパクト投資、それが当機構が提供している「事業承継未来ファンド」である。
1号ファンドの募集時には、まだ当機構が何者かもわからず、示せる実績もない中で、それでも我々の志に共感して、大事な財産を託してくださった方がいたことにとても勇気づけられた。なかには複数のファンドに投資して頂いている方もおり、その「志金」があったからこそ当機構が中小企業のニーズに応え、事業承継問題を解決することが出来ていることを、大変ありがたく思っている。同時に、ファンド設立時には理念としてしかお伝え出来なかった「社会貢献しながら、資産運用する」というインパクト投資の成果を、5年の時を経てようやく実績として数字でご報告出来るようになったことを大変嬉しく思っている。
さて、ファンドの紹介や経緯はこのくらいにして、本題に入ろう。2026年7月から募集を開始した「事業承継未来11号ファンド」では、弁護士等との協議を半年超に渡り十分に行ったうえで、これまでのファンドと比べて条件を改善した。その改善点と変更理由について、ご説明したい。
改善点は、大きく2つある。
1つ目は、「目標分配率の向上」だ。10号ファンドまでは年率「年4%(上限)」であったが、これを「年5%超」に引き上げた。目標の水準自体を1%底上げしたほか、当機構の承継後に業績や財務状態等の大きな改善を果たせた場合には、たとえば6%や8%といったより高い利回りを投資家の皆様にご提供できるように変更したということだ。
2つ目は、「運用期間の短縮」を可能にした。運用期間として5~10年程度を想定していることは10号ファンドまでと同じであるが、「承継対象法人の業績、財務状況、マーケット環境等により変動することが出来る」ように変更した。これにより、当機構の承継後に業績や財務状態等の大きな改善を果たせた場合には、5年を待たずに1年や2年でも償還できるようにした。
一般的に、期間が長くなると投資利回りは高くなり、短くなると低くなるというのが投資の世界の常識だ。だが、今回の変更は、投資家の方にとって、その両方のいいところ取りをして、よりよい条件で投資して頂けるように改善したということだ。
これらの変更を行った理由は、3つある。
1つ目は、外部環境として、ゼロ金利の時代が終わったということだ。2021年9月に当機構が1号ファンドの募集をした時の日本の5年国債の利回りは、0.1%以下で、月によってはマイナス金利の時もあり、実質ゼロ金利の状況であった。その中で設定した事業承継未来ファンドの目標分配率としては、投資の社会貢献性を反映しながらもリスクプレミアムを約4%と設定し、年4%を目標とした。
ところが、2026年6月末において、同5年国債の利回りは1.9%にまで上昇している。金利は変動するものであり、その5~10年先の予測を行うのも困難であるが、この1年間にわたり慎重に検討してきた結果、ゼロ金利の時代は終わったと判断し、基準の利回りも日本の政策金利の過去5年間の引き上げ幅(-0.1%⇒1%)を参考にして、1%引き上げることとした。また、継続的に利上げが続いた場合に備え、その場合にはより高い利回りをご提供することもできるように5%「超」を目指すこととし、これまで設定していた「上限」を撤廃した。
2つ目は、当機構の体制が整い、実績が出てきたことだ。2021年9月の1号ファンド募集時は、当機構の人員は10名程度にすぎなかった。コロナ流行の真っ只中で高齢者が多い創業者の方にお会いすることが社会的に憚られた時代でもあり、承継先企業も3社に過ぎなかった。その3社もほとんどが引き継いだばかりの会社であり、コロナ禍で企業活動が大きく制限されていたこともあって、当機構が承継した後の成果として示せるデータはほとんどなかった。
それから約5年を経た2026年7月現在、当機構の人員は約60名と6倍に増えた。承継先企業の数は28社となり、グループの売上は約240億円、グループ従業員数は約1300名と大きな成長を遂げることが出来、企業としての体制を大幅に強化することが出来た。
そしてもっとも大事なのは、当機構が引き継いだあとに「事業承継プラットフォーム®」や「経営シェアリング®」を提供した結果の実績値として、平均で企業の売上は計画比105%となり、営業利益は174%と、大幅な改善を果たしたことだ(なおこの利益は、平均2ケタの従業員報酬の増額を行った後の数字だ)。中には利益が承継前の約4倍になっている企業もある。実績値で大きな成果を上げることが出来ており、その仕組化や共有も進んで再現性が高まった結果、無理なくより高い利回りを目指すことが可能になってきたのだ。
事業承継未来ファンドに投じられた資金は、承継先企業の優先株になり、償還時までに事業から獲得する利益によって償還される。そのため、たとえば承継先企業の利益が計画と比べて2倍になれば、投資期間は10年の半分の5年に短縮することが可能になる。同時に、利回りも上げることも可能だ。実際に、ある金融機関との共同で試験的に行った事例では、承継から1年ほどで償還を行うことが出来た。その場合でも、承継後の改善効果の方が大きかったため、承継先企業にとっての負担感はほぼなかったという実績もある。
当機構の体制が未整備で、承継後にどれだけの成果を上げられるのかも未知数であった5年前には、保守的な期間と目標利回りの提供しかできなかった。それにもかかわらず、当機構の志を信じて投資して頂いたこれまでの支援者の方には、大変に感謝している。そのおかげで当機構の体制はこの5年間で見違えるほど充実したことと、その実績及びデータに基づき、今後も一定の成果を上げられる確度が高まったため、その成果を支援者の皆様により還元できるようにしたということだ。
3つ目は、当機構が提供する永久保有型の「事業承継プラットフォーム®」へのニーズが増加しており、そのニーズに応えるために、より多くの資金が必要になっているためだ。
過去5年の活動の結果、当機構が提供する永久保有型の「事業承継プラットフォーム®」は世の中に徐々に広がっており、提携先の金融機関において事業承継問題解決のための有効な手段として認知・活用され出している。その結果、今年の相談件数は優に600社を超える見込みであり、近々に年1000件を超えていくことはほぼ確実だと実感している。
また、想定していたよりも大きい企業(中小企業と言うよりも、中堅企業)からの引き合いが増えてきていることもあり、金額的にも1社あたり数億ではなく数十億の企業が増えてきている。大企業がノンコア領域と位置付けた企業について、大企業からの指名を受けて検討をする案件も増えている。このように増加傾向にあるニーズにお応えするために、より多くの資金が必要になってきているのだ。
ただし、だからといってただ利回りを上げて、いわゆる「なんでもいいから高いリターンをくれ!」という資金を集める気はない。投資家に「短期で高い利回り」を提供してするということは、その裏側で承継先企業に「短期で高い利回り」を払わせる、ということでもあるからだ。
投資家の方々のニーズに応えることはもちろん大事だ。ただ、あまりに短期で高い利回りに設定すると、「事業承継問題の解決のために支援する」はずが、いつの間にか、「事業承継問題に困っている企業の弱みに付け込み、暴利をむしりとる」ことになりかねない。それでは本末転倒だ(いまの資本市場には散見される事態ではあるが・・・)。本質的に、資本を扱う運用業者には、そのバランスを取るための高い倫理観と節度が求められるのだ。
また、当機構が運用する事業承継未来ファンドの市場は、金融的に言うと非常に小さい。当機構が掲げる5000社の承継に必要なのは1兆円程度だし、日本全体で見てもせいぜい10兆円程度の市場であろう。その市場規模は、全体でも東証の時価総額の1%以下に過ぎない。当機構が必要とする金額は、日本の個人金融資産の0.1%以下の金額だ。つまり日本人が保有資産1000円あたり1円を投じれば足りる金額なのだ。
裏返して言うと、そもそも個人が投資する機会自体が非常にレアな市場なのだ。上場株のように、誰でもいつでもいくらでも投資できるような、大きな市場ではない。いずれプレミアムがついてもおかしくないような、小さい市場における、希少なインパクト投資の機会なのだ。だがら、いずれ「事業承継未来ファンドを持っていた。しかも〇号から。」ということ自体が、支援者の皆さんの誇りになるような商品に育てていきたいと思っている。
だからこそ、当機構のミッションである「事業承継問題を全面的に解決し、日本の宝である中小企業を子や孫に残します」に賛同して頂ける方、同じ志を持つ方々からの、想いの詰まった大切な「志金」をお預かりしたいと思っている。実務的に出来るなら、できれば投資家を限定して、お預かりしたいくらいだ。(ヒトの心を知るのはなかなか困難なのだが。。。)
そして、そのありがたみと重みを十分に感じつつ、その使命感をきちんと背負いながら、今日も仲間と共に、子や孫のための活動を本気でしていきたいと思っている。
