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なぜ事業承継未来ファンドは個人向けなのか?

先日の支援者の会の後、面白い質問を頂いた。
それが、今回の表題である。

 

質問者の方は、機関投資家として、
主にPEファンドへの投資を長年行っているプロの方だった。
一般的に、PEファンド(プライベートエクイティファンド:ここに事業承継ファンドも含まれる)
というのは、1口10億円という大口の、プロの機関投資家の世界である。
その世界で長く生きてきた方なので、
「なぜ当機構の事業承継未来ファンドは、個人向けなのか?」という質問が出たのだろう。

 

本ファンドを個人向けにした背景には、
いくつもの理由がある。
今日は、その代表的なものを3つ、お話していこう。

 

1.投資期間が短い

第1の理由は、構造的に機関投資家の資金は短期であることだ。
PEファンド向けでも、せいぜい10年程度の期間しか出せない。
そうすると、最長10年の中で、
対象企業を見つけて、交渉して、M&Aを実行して、
経営して、改善して、
さらに売却して、回収・分配までしなければならなくなる。
それを10年の中ですべて終わらせるとなると、
各投資先の平均保有期間は、
せいぜい3年から5年がいいところだ。

 

我々は3ー5年間だけ持つことを、事業承継とは考えていない。
(それは、転売前提の、短期トレードでしかない)
我々が承継する企業は、50年、100年という永久保有を必要としている。
また、企業経営の現場においても、
50年、100年を見据えて経営するのと、
3ー5年の保有期間だけよければよいという経営では、
やることが全然変わってくる。
(もちろん、前者の方が、社会にとって有用なのはいうまでもない)

 

つまり、構造的に期間が合わない資金なのだ。

 

2.企業への負担が大きい

機関投資家の資金は、ファンドマネージャーにとっては集めやすい、ラクな資金だ。
まず、法的に特例が設定されているから、
個人向けファンドをつくるよりもはるかに簡単に、低コストで、短期間で始められる。
(当機構が個人向けファンドをつくるまでには2年半の期間と、億単位の費用がかかっている。
 もし機関投資家向けにしていたら、その2-3割の期間と費用で出来ただろう)
さらに、1口が10億と大きいから、営業の手間も格段に少なくて済む。
(バブル環境下で資金が溢れていることもあり、ここ数年は特に資金を集めやすい)
管理や報告事務手間やコストも、個人向けと比べれば数十分の1で済む。

 

ただ、ラクなものには、相応のコストがかかる。
(それは世の常だ)
機関投資家がPEファンドに投資する際の要求リターンは、
年率で15-20%と、べらぼうに高い。
そこに、さらにファンド自身の利益の取り分を載せるので、
投資先への要求利回りは、年率20-30%にもなる。

 

その要求利回り=負担は、結局だれが負うのか?

 

ファンドや機関投資家は、ただ金を出すだけだ。
(金融は、直接的に利益を生み出す存在ではない)
この負担は、投資先の企業がコストととして負担し、支払うのだ。

 

だが、世界の自然成長率は、年4%程度だ。
しかも、人口減と高齢化で、今後は年2%に下がっていくことが見込まれている。
自然に出せる利回りが年2-4%の中で、
その10倍ものリターンを事業成長から出すことが出来る企業など、そうそうない。

 

結果、「成長」からだけでは足りないので、「分配」をいじって払うことになる。
たとえるなら、パイ全体を増やすのではなく、切り方を変えるのに等しい。
(分配を決めるのは、株主の権利だ。そして、ファンドはその強権を株主としてすべて持っている)
たとえば、従業員をリストラする、昇給や賞与をカットする、
福利厚生費をカットする、などにより、まず従業員の分を減らす。
将来への研究開発費を抑える、設備投資や改修費用をケチる、
などにより、設備分や、将来の分を減らす。
本社を便利なところから不便なところに移して、
その他経費も大幅に減らす。
あるいは、債務を増やして現金をつくる、などもその1つだ。
様々な手法により、現在の株主以外の「取り分」を減らし、
その余剰分や将来分を現金にして、
「株主」であるファンドに分配するのだ。

 

将来の企業の力が落ちたとしても、ファンドには関係ない。
目先3-5年の自分が持っている間だけ、よければいい。
売却した後のことは、ファンドには関係ないからだ。

 

これは、「中小企業を応援する」という我々の理念とは、真逆だ。
また、社会的観点から見ても、
これでは社会の総富を増やすどころか、逆に減らしてしまう。
この根本的な理念の違いが、第2の理由だ。

 

(有識者の中には「ファンドは中小企業を搾取している」という方もいる)
 ファンドの行動は、合法ではある。(少なくとも、いまは)
 資本主義のルールに則ってもいる。(少なくとも、いまは)
 だが、実情を良く知る投資家や企業経営者の中には、
 「年20-30%の高利貸しと同じ」だと考える人も増えてきている。
 ファンドと企業の間での訴訟が増えていることに鑑みると、あながち否定もできないだろう)

 

どんなに合法でも、
ルールで規制されてはいないとしても、
我々は中小企業を搾取するつもりはない。

 

3.社会への波及効果が低い

もう1つは、社会への波及効果が低いことだ。
機関投資家のお金は、一般に富裕層の資金で出来ている。
その富裕層の資金を大きく増やしたところで、消費が増えるわけではない。

 

たとえば、もしあなたが1兆円持っている富豪だとしよう。
それが1.2兆円になったところで、どう使う?
もはや大した使い道はないだろう?
どんなに裕福な人でも、
1日に3食食べれば十分だし、
立って半畳寝て1畳のスペースがあれば生きていける。
結果、機関投資家のお金をいくらうまく運用して増やしても、
そのお金はなかなか社会に還流されないのだ。
それは、ただ貧富の格差を広げるだけで、社会への波及効果が非常に低いのだ。

 

逆に、一般家庭の個人投資家のお金を運用して増やせたら、
どうなるだろう?
そもそも個人投資家には、よい運用手段が少ない。
だから、1092兆円ものお金が、現預金として滞留している。
この現預金に「社会貢献しながら、資産運用する」手段を提供し、
税前で4%、税後で3.2%程度の税後利回りを提供したら、
年30兆円超のお小遣いを提供することが出来るようになる。
それを一般家庭の個人投資家に広く薄く提供すれば、
多くの国民が、ちょっとした日々の贅沢や楽しみのために、日々使うだろう。
その消費は、乗数効果をもって大きく社会に波及し、
それだけで日本の経済は年率5.4%で成長するようになる。
経済が成長すれば、お金が回りだす。
消費が増えれば売上が増え、利益が増え、
それが給料を上げて、さらに消費を増やす好循環になるからだ。
その1つ目の消費を増やす原資を、
個人向けに運用益を提供することで、お手伝いさせて頂くのだ。

 

この眠れる巨額の個人の現預金は、日本の最後の望みだ。
これを、社会貢献と資産運用を両立する形で、
将来の不安を払拭し、
個人が気持ちよく運用できるようにすれば、
失われた30年の反省を生かし、
子や孫のためによりよいな社会をつくるための、大きな力になる。

 

だから我々は、多くの障害と苦労を覚悟の上で、
事業承継未来ファンドを個人向けに提供することにしたのだ。

 

なお、3/31には、当機構HPの大幅なアップデートを予定している。
新HPでは、事業承継未来ファンドや、当機構の活動について、
よりわかりやすいようにしているので、
新たなHPをぜひご覧頂ければと思う。

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