当機構が子や孫の未来を守るための「5000社の事業承継プロジェクト」を実現していくために、いつか当機構の活動にご協力頂きたいと、私が創業時から考えている「元中小企業のオヤジ」が5人いる。そのうちの1人が、日本電産の永守氏である。本日は、同氏の新著『成しとげる力』を参考に、事業承継について書いていきたい。
そもそも、当機構の基本的なビジネスモデルは、いわゆるファンドではなく、アマゾンや日本電産といった事業会社を参考にしていることは以前も書いた通りだ。なぜかというと、ファンドは(時間軸の長短の差はあれ)その仕組み上、しょせんは売買して「利ザヤを得るトレーダー」の域を出ることが出来ないので、事業承継問題の抜本的解決には寄与しないからである。永久保有する承継者として事業を引き受け、責任もって残せるのは、事業会社だ。それも、資本主義下で「私益優先の営利事業を行う事業会社」ではなく、「公益優先でソーシャルビジネスを行う事業会社」だというのが、当機構の考えだ。
とはいえ、事業会社としての違いはあれ、多くのM&Aを行い、win-winで成長し、成功している事業会社には、我々としても大いに学ぶところがあると考えている。特に、日本電産は、自らの祖業を成長させてきた上に、57社もの会社をM&Aで吸収・再生し(その多くは再生型だ)、その全てを成功させてきた、日本企業としてはとても珍しい会社だ。同社のM&Aはすべてが営利目的のビジネスであるため、営利に目的に合わない企業は対象外なので、そもそもソーシャルビジネスとして、営利よりも公益を優先して広範な企業の存続に取り組む当機構とは目的や動機は異なるが、それでも57社もの会社をM&Aで引き受け、そのすべてを成功させてきたという点は、尊敬や驚愕に値する。永守氏や同社の経営手法・考え方については、これまでも広く公開されているが、その集大成ともいえる本が「成しとげる力」だ。特に、承継者を志す方には、ぜひご一読いただきたい。実際、永守氏の手法は、事業承継問題の全面的解決を目指す我々としても役立つので、事業承継に合うように修正したうえで、「事業承継プラットフォーム」の一部として現場で活用・提供している。その内容は、精神論から具体論まで多岐にわたるが、一例をご紹介すると、たとえば下記のようなものがある。
・臆病は、悪くない
はたから見るよりはるかに慎重でなければ、企業経営はやっていけない。特に、リソースや余力が少ない中小企業では、なおさらだ。
・困難には、正面から対峙する
逃げようとするから、かえって命を落とすことになる。困難には、正面からがっぷり4つに組んで取り組むことだ。困難さんは、必ずポケットに解決策を忍ばせてやってくる。それを奪い取れば、どんな問題でも、必ず解決できる。
・運が7割。常に前向きに
7割の運を掴むために、3割の準備と努力を必死にする。「先憂後楽」で、日々前向きに、憂いに対応する。運が7割と思っていれば、勝ってもおごらず、十分に準備していれば、たとえ負けても死なずに乗り越えられる。
・大ぼらを吹け。そして「できる」と100回唱えよ
大ぼらを吹くにも、並大抵ではない胆力と気合がいる(たいていのヒトには、大ぼらを吹くことすらできない)。大ぼらを吹いたら、必死の努力で中ぼらにし、小ぼらにし、最後は叶える。まず、気宇壮大夢を抱き、諦めることなく、叶うまで努力を続けることだ(それが私益のためでなく、大義のためならなおよいだろう?)。
・成果を出すには、2乗の努力が必要
3倍の成果を出すには、3倍の努力では不足。9倍の努力が必要だ。簡単に「出来ない」と言うことを許せば、会社は簡単につぶれる。自分勝手な屁理屈で限界を決めつけるな。本当に限界まで、不眠不休で倒れて死ぬ寸前まで、君は考え、努力したのか? 大抵の人間は、限界の半分以下で自分の限界を勝手に決めつけ、努力した「つもり」になってるだけだ。屁理屈を許さず、出来るまで限界の努力をすれば、乗り越えられない課題などない(陰の極、も同様)。
・すぐやる、必ずやる、出来るまでやる+6S
事業が行き詰まる会社の9割のヒトは、この当たり前のことが出来ていない。経営で大事なのは、奇抜なことではなく、基本的な行動。基本に忠実に、徹底して行動を改善することだ。
・「どうしましょうか?」と聞くな
それを考えるのは、君の役目だ。自ら考えなければいつまでも成長しない。まず自分の頭で限界まで考え抜いて、最低限、「A案、B案、C案があります。●●の理由で私はA案がよいと思いますが、いかがでしょうか?」と聞け。
・人との関係は、どれだけ時間を共にしたかで決まる
1度メールや電話をした程度で、手軽に済ますな(まして、「伝えました」と責任放棄をするな)。直接会って、相手に伝わるまで、心底納得するまで、1000回繰り返せ。それを、さぼるな(=箸よく盤水を回す)。
・飯を食わしてくれる人に、人はついていく
リーダーは、常に自ら最前線で戦え。ダメになる会社のリーダーは、自分は一番安全な本丸にいて、部下には「危ないところで戦え」と指示していることがほとんどだ。
・千切り経営
普通の人にフルマラソンは無理。でも、電柱1本ずつに分ければ、普通の人でも走れる。
・家計簿経営
会社の予算は他人事になりがちだが、予算は無限にあるものではない。自分の家計と同様、ある範囲で、どうやりくりするかを考えろ。
・井戸掘り経営
どうしても足りないなら、別の改善策を考えろ。生活をかけて必死に考えて、水が出るまで掘り続けろ。
・人は、自燃型3%、他燃型80%、不燃型17%
不燃型が20%を超えると、組織は潰れる。出来るだけ低くし、最悪でも10%以下に抑えよ。
・志と努力、その結果
私(永守氏)は1973年に会社を創業した時、たった3人の社員を前に1時間40分にわたり、「50年後に1兆円を目指す」とぶち上げた。「1億円の間違いじゃないですか」と問い返すものもいた。が、目標は全て実現した。人も国家も裏切ることがあるが、努力は絶対に人を裏切らない。
・今後の計画
75歳になった今、新たに50年計画を立て、100兆円を目指すことに決めた。本気で125歳まで生きるために、酒・たばこはしないし、古希に自宅につくったトレーニングジムで、トレーナーに指導で、毎日1時間ほどのトレーニングを欠かさない。どうだろう? 特に最後の、75歳から125歳まで本気で生きる意志と、その計画は、秀逸だ(75歳になった時に、本気でこう言える人になりたいものだと思う)。あと5年程度で人生終わりと考える75歳ではなく、(男性の平均寿命はその程度だが)あと50年本気で生きるつもりの75歳の方にとっては、事業承継問題は「他人事」ではなく「自分事」だろう。なにせ、今年生まれた子や孫が50歳になった未来の日本を、自らも共に生き、共に見ることになるからだ。
これまで直接ご縁のある方ではないが、近いうちにお会いしに行って、ぜひ直接聞いてみたいと思う。
「子や孫(そして50年後のあなた自身)により良い社会を残すために、当機構の活動にご協力いただけませんか?」と。

