「2020年の合計特殊出生率は1.34になった」
という衝撃的なニュースが、厚生労働省から発表された。
同数値は、1970年代以降の約50年間にわたり、
人口維持に必要とされる2.07を大幅に下回っており、
かつ5年連続で低下した。
その結果、2020年の日本の人口は、
出生数84万人に対して、死亡数137万人となり、
差し引き53万人減少している。
これは、県なら鳥取県、
市なら姫路市、
東京23区なら江東区1つ、
(もしくは渋谷区+港区+千代田区の3区合計)
が1年で消滅したのと同等の人口が減少したことを意味する。
そして、この人口減の流れは、今後長期間続くだろう。
国は、その人口減少の影響を緩和しようと、
「出生率1.8」という目標を置いている。
(当面達成できそうにはないが)
ただ、たとえこの出生率1.8を達成しても、
人口が減り続けることに変わりはない。
減少ペースが多少緩やかになるだけだ。
この国家レベルでの人口減少という流れは、
21世紀の世界の大きな流れなのだ。
人口大国の中国ですら、すでに人口減少は時間の問題と言われている。
(中国政府が隠しているだけで、すでに中国の人口は減少しているという指摘も多い)
また、オックスフォードの人口問題研究所は、
「韓国は、22世紀に人口減少によって消滅する最初の国になる」
と発表して、波紋を起こした。
つまり、人口減は、一地方や日本国だけの問題ではなく、
世界共通の問題になってくるのだ。
ちなみに、
今年日本で70~75歳を迎える世代が生まれた頃の
1945~50年の出生率は3.65~4.3もあり、
出生数は233~279万人と、
いずれも今の約3倍の水準であった。
その世代が平均寿命を迎える頃(計算上は10年後程度)には、
死亡数が1.5~2倍に増える一方、
出生数はそれほど変わらないだろうから、
毎年の人口減は、年100万人を超えてくるだろう。
毎年、政令指定都市が1つずつ消滅する位の人口減が起こるわけだ。
そしてこの人口減が、
事業承継問題にも大きな影響を及ぼしている。
つまり、こういうことだ。
過去は、1人の社長に対して3人の後継ぎ候補がいて、
その3人から1人を選んで継がせればよかった。
だが、今や、もはや3人の社長に対して、
1人の後継ぎ候補しかいない(選べる余地はない)。
そして、たとえその1人が優秀だったとしても、
そもそも2人は絶対的に足りないのだ。
さらに不都合な真実として、
同じことは、社長だけでなく、従業員レベルでも発生する。
現場のリーダーから作業員に至るまで、
同じことを同じようにやろうとしていたら、
人が足りずにどんどん出来なくなっていくのだ。
これが、事業承継問題の真相だ。
(「後継ぎが足りない」という広告を見ることがあるが、
足りないのは「後継ぎ」だけではない。
それは事業承継問題のごく1部であって、すべてではないのだ)
では、どうするべきか?
残念ながら、人口の減少は、
一企業レベルでどうこうできる問題ではない。
ただ、人口減という流れを想定しておけば、それを機会にすることは出来る。
たとえば、「日本の中小企業は数が多すぎる。だから効率が低い」
という意見がある。
だが、人口が減っていくなら、
同じ事業を同じように回すことは、いずれにせよできなくなる。
人手で行う仕事を減らしていくことは、
今後すべての企業が生き残っていくための必須条件になってくるのだ。
効率とは、「付加価値/労働時間」で定義されるから、
それは結局「中小企業が効率的になる」ということだ。
(出来ない企業は、人口減という時代の流れに負け、淘汰される)
政策等でM&Aを促進して、
よく知らない企業同士をくっつけて、
余った人員のリストラをすれば、
確かに効率はあがるだろう。
だが、そんな無理やりなことをせずとも、
効率を改善する機会は、時間と共にやって来る。
生活を支えているよい企業を、
きちんと長く残そうとしていけば、
同レベルの効率化は自然と必要になるからだ。
そして、その効率化を促進するのは、
当機構の重要な役割であり、機能だ。
たとえば、中小企業1社1社が、
自社単独で巨額のIT投資をしたり、
AIやRPAの導入をするのは、
たとえ社長がその必要性を理解していても困難だ。
(リソースが足りないからだ)
また、実務の効率化には長い時間がかかるため
ファンドの投資期間である3年程度では費用対効果が低く、
そもそも投資が実行されない。
その点、当機構の場合、
生活を支える企業に永久投資をして、
共同経営を行っていくから、
「一歩お先に」効率化を図っていくことが出来る。
この一歩お先に、の効率化の1つ1つは小さなものだ。
だが、長期間かけて小さな1歩を積み重ねていくことは、
複利効果を生み、いずれ大きな成果になって表れる。
いまや世界に冠たるトヨタ自動車も、
小さな町工場から日々のカイゼンを積み重ねて、
いまの規模になったのだ。
人口減を長期経営の前提として受け入れること、
その「問題」を「機会」にするべく、先を見て経営していくこと、
これは、当機構が承継するすべての企業の経営において心がけていることだ。
そして、それを行うのは、結局人だ。
どんなに優秀な社長がはいっても、1人では大したことはできないのだ。
だから、当機構の「承継者」として登録し、
承継先企業の社長や幹部になる人には、
「とにかく人を大事にしてください」と常に伝えている。
当機構はなによりも各企業の人を大事にして、事業を承継していく。
そして、当機構自身も、人をもっとも大切にする企業でありたいと思っている。
「人が全て」
これは今後もずっと変わることのない、
当機構の中核を為すバリューの1つであるし、
いつまでもそのバリューを守っていきたいと思う。