早いもので、当機構は9月末をもって6期目の決算を迎えた。詳細な数字はこれからだが、速報値はすでに出ているので、今回はまず6期の活動結果を皆様と共有したい。その後、第7期に向けての経営方針もご説明したいと思う。
まず6期の活動結果だが、2024/9期末時点で、当機構の承継先企業数は23社まで増えた。通期では10社増となり、下期で見れば月1社の承継という目標を達することが出来ており、承継ペースも上がってきている。当機構の目標である「雇用・経済・安全を残す」については、残した経済(売上)は180億円超となり、残した雇用数も1000人を超えた。
もし、この23社がなくなっていたら、180億円の経済と1000人の雇用が消滅していた。また、国や地方の税収及び社会保険料も、年20億円以上失われていた。社員の家族や取引先の連鎖倒産も含めれば、3000人以上が失業して路頭に迷いかねなかった。その責任を何とかしようとお考えになっていた創業者の方々に、これまでになかった新たな解決策をご提示することが出来、子や孫の未来のためにこれだけの悪影響を防止できたことは、社員共々とても嬉しく思っている。結果として、一私企業の6年間の活動結果としては、相応のインパクトは残すことができているのではないかと考えている。
また、承継先の創業者の方々から、「JSKのような永久保有前提で従業員や取引先のために転売や統合をせずに会社を引き継いでくれる先がなかったら、本気で会社を潰そうと思っていた」というコメントも複数頂いているので、この場を借りてご紹介させていただく。
三協プレス工業株式会社 元 代表取締役 花澤 正克 氏
「会社の存続と従業員の雇用を守ることが最優先でしたので、JSKが掲げる『永久保有』は一番の決め手となりました。会社が100年続いて欲しいという思いは強かったのですが、花澤の名を残したいといった創業家としての意識はありませんでした。これまで長きに渡って良い関係を築いてきた取引先との関係継続という観点からも、JSKが同業種ではなくニュートラルであった点も決め手となりました」
株式会社ふく太郎本部 元 代表取締役 古川 順一 氏
「事業承継で特に重視したのは、役員・従業員と家族の生活の安定と取引先に迷惑をかけないこと、の2点です。JSKであれば、M&Aのような転売もなく永久保有ということで、従業員を継続雇用し、取引先も引き継いでいただけると思いました。これからも永く会社を継続していくために経営支援も行っていただけるということにも安心感がありました」
株式会社柳川製作所 代表取締役 柳川 正樹 氏
「顧客・従業員・会社の順に三者を大切にすることを社是として掲げていますので、顧客の維持と従業員の雇用を最優先に考えました。会社はこれからも100年続いてほしいです。JSKに決めたのは、『永久保有』をはじめとするJSKの理念と、私自身の「顧客と従業員を大切にしたい」との想いが合致したからです」
さて、これらのコメントを読み頂いて、何か気付いたことはないだろうか? 気付かなかった方は、再度よくお読みいただいて、再考してみていただきたい。実は一つ、皆さんが日々ニュースや記事でよく目にしている大きな事項が、すっぽり抜けているのだ。
おわかりになっただろうか? 答えは「株主利益の最大化」だ。当機構が引き継いだ会社の創業者の中で、「株主利益の最大化のために、会社をJSKに承継します」と言った方は、1人もいない。大企業の経営者なら、「株主利益の最大化のために行動する」というのは、あたかも当然のノルマのようなものである中で、である。
これが、上場企業を代表とする大企業と、中小企業の大きな差の1つである。そして、多々ある中小企業の中でも、「株主利益(=多くの場合は創業者自身の利益)」よりも「顧客や取引先への貢献」と「従業員の雇用維持」を特に重視する創業者から選ばれ、会社を引き継ぐことが多いのが、当機構の特徴だ。
ここには、大きな資本主義の矛盾がある。そして、その矛盾を乗り越えられる仕組みを提供していることに、JSKグループならではの中小企業の勝ち筋が残されていると、我々は考えている。
どういうことか?まず、大企業においても、多くの経営者が「取引先は大事」「雇用は大事」と言うのは事実だ。ただ、上場企業になると特にだが、株主からの外圧を受けて、少なくとも同じくらい「株主利益の最大化」を果たさなければならない。では、なぜ優先順位に差が生じるのか?
ここで問題になるのが「時間軸」だ。極論するとわかりやすいのだが、上場企業の株主と言うのは、期末時点で1秒間だけ株主であれば、その直後に株を売却しても、当期の株主総会で株主としての権利を行使できる。そして、その期の株主総会で配当を得なければその行動は無駄になるし、その期に多額の配当を得れば翌期以降のことは関係ない(翌期はすでに株主ではないからだ)ため、極端な配当を支払うような要望を出す動機がある。その中で、経営者としてもそれらの株主に選ばれる必要がある(役員の選任権は株主総会にあるからだ)から、当然に無視は出来ない。だから、どうしても、経営の時間軸は短くなる傾向がある。
その短期的な配当を出すために、もっとも簡単なのが、長期的に成果は出るが短期的にはコストにしかならない、若手の採用、教育研修、福利厚生、設備投資等を削ることだ。これが、短期的には利益になるだろうが、長期的にはマイナスにしかならないことは、誰でも直感的にわかるだろう。
上記で書いたのはわかりやすくするための極端な例だが、これは厳然たる事実として存在している資本主義の原則であり、大きな矛盾だ。
他方、多くの中小企業では、そもそも日々の株の売買など出来ない。公開していないために売買市場がないからだ。また、もし仮に将来出来たとしても、会社を大事にしている創業者は、自分の首を絞めるような行為はしないだろう。(一部に、会社よりも自己利益を大事にしていて「カネさえくれれば、あとは会社も従業員も好きにしていい」という若い創業者も中にはいる。ただ、そういう方とはJSKはお付き合いしないことにしている。)
加えて、ヒト・モノ・カネの力が上場企業に比べたら圧倒的に弱い中小企業で、創業者が「俺様=株主様=社長様」という姿勢でいたら、そもそも社員も取引先もついてきてくれず、会社は優良企業にはなっていないだろう。だから、中小企業の創業者(多くの場合は株主でもある)には、長期的な目線で、安定して、取引先や雇用と大事にする、という動機が生じる。
これを徹底して行うとどうなるか? 若手を採用して、丁寧に教育や研修を行い、職場改善のための設備投資や福利厚生の改善を行い、将来も生き残っていけるように研究開発等を促進することになる。すると、あら不思議。中小企業では、上場企業と真逆の行動が正当化される。これは、短期的にはもちろん利益にはならない。ただ、Jカーブ効果を生じて、長期的には大きなリターンを生じさせる。皆さん自身が若い従業員なら、どちらの会社に入りたいですか? きっと長期的によい会社に入りたい、働きたいと思うでしょう? だから、当然に人材採用でも優位に働く。
では、結局何が違うのか? 長期的に(出来れば半永久的に)株主を安定させられるか否か、が大事なのだ。だから、JSKは永久保有によって、株主を安定させる方法を提供しているのだ。
さて、中小企業が事業承継を迎えると、なにが出来るか? 選択肢は、大きく3つある。①親族内承継をして、「親族=株主=社長」という状態にする。これは日本で過去から多く行われてきたケースで、「事業承継問題」には該当しないケースだ。②としては、M&Aをして、「ファンドや大企業=一時的な株主、社長=株主が選ぶ」という状態にする。ただこの場合、株主としても永久保有とはいかないので、株主はいずれ変わる運命にある。その結果、会社の制度や仕組み、文化は、良くも悪くも何度も大きく変えられることが前提だ。そのため、会社をグローバルに伸ばしたい、上場したい、株主利益も最大化したい、というタイプの創業者には受け入れられやすいし、有効だ。半面、すでに良い会社を築いており、「従業員や取引先が一番大事。外部株主から無理な成長を求められたくないし、従業員や取引先に無理な変化も強いたくない」という創業者の要望には、相反してしまう。
この①、②の解決策に満足していない創業者に選ばれやすい第3の選択肢が、③JSKに永久承継して、「JSK=永久株主=創業者と同じ目線で社長と共同経営」という方法だ。JSKが提供する「事業承継プラットフォーム」は、いわば創業者が長く果たしてきた株主としての役割(長期株主+経営)をそのままそっくり引き継いだうえで、しかも個人的な寿命の制限や、万一の社長の事故・病気等による突然死等に備えたバックアップ体制の完備、相続税対策といった、一個人や一企業では解決できない課題を組織的に解決し、より改善させて安定的に永続させる方法なのだ。
そしてこの仕組こそが、「中小企業が、中小企業として生き残っていく」ためのカギになる。大きな成長が見込まれるレッドオーシャンで大企業と争う必要は、中小企業にはない。むしろ、大企業が手掛けない分野で必要な機能やサービスを提供することで、大企業と協力し、お互いの強みを活かして日本のために雇用と経済の総和を増やす活動をしていくのが、中小企業の生きる道だというのがJSKの考え方だ。それは、これまで引き継いできた会社でも、今後引き継いでいく会社でも、同じことだ。
さて、ここで話を進めて、7期の経営方針についてご紹介しよう。創業者兼社長の私が言うのもなんだが、JSKのメンバーも50名を超え、「中小企業病」ともいえる課題が出てきている。そのため、全メンバーで協議したうえで、特に以下の2つのテーマをもって7期は経営していく方針だ。
①つ目は、「吉川のワンマン会社」から、「メンバーが各自自走して5000社の承継を実現する組織」に進化することだ。6期を終えて、JSKのグループ従業員は1000人、売上は180億円を超えた。ただ、5000社の目標に対してはまだ0.5%であり、我々には今後200倍以上の成長余地が残されているので、当然ながらまだまだ成長が必要だ。また、「日本の事業承継問題を全面的に解決する」トップランナーとして、実績を上げながら強固な地位を固めつつある中で、相応の責任も生じてきている。ただ、その過程で、万一「創業者の吉川社長が亡くなったらどうなるの?」という質問に、いつまでも明確に答えられないようではならない。だから、万一に備えた経営のバックアップ体制の整備と、より一層の成長加速のために、ワントップのいわゆる文鎮型の経営から、組織化・分権化・権限移譲を進めてピラミッド型の組織経営に移行することで、メンバー全員が責任をもって自走して結果を追求する組織に進化させるということだ。
以前から最低限の備えはしてきたことだが、特にここ1年で2倍以上に増えた新規メンバーの中から自発的にこのような声が上がるようになったことを、社長としてはとても嬉しく思っている。また、社長が口出しせずとも、メンバー主導で各課題別にタスクフォースを組んで改善に取り組んでいけるようになったことに、JSK自身も会社としての大きな成長を感じており、とても頼もしく思っている。このような直言居士の頼もしいメンバーが居てくれるなら、分権化は必ず正のインパクトの方が大きくなると信じている。だから、
JSKグループはより一層拡大していけることを確信して、この多くの会社が乗り越えられない課題に、不退転の覚悟で取り組み、必ず成し遂げるつもりである。(余談だが、個人的に、「あなたが死んだら?」と日々聞かれるのは辛く、時に耳と心が痛むこともある。だが、子や孫のためにその対策はやはり必要なので、正面から受け止めるべく私自身も日々努力している。世の中の中小企業の社長も、皆さん同様の境遇にいるのだから、直言居士に囲まれているのはむしろ幸せなことだと自分自身に言い聞かせつつ。)
②つ目は、「メンバー全員が、参加/所属していることを誇れ、社会からも尊敬される組織」に進化することだ。目標イメージとしては、マッキンゼーやゴールドマンサックスに所属し、高給を得ることで感じる誇りというよりは、「国境なき医師団」や「国連」のメンバーと同様に、大きな社会貢献を果たすことで誇りを得られる組織を目指している。
7期目に入り、メンバーも55名を超えた。今も毎月2,3名が増えているために、1年前に借りたオフィスがもう手狭になり、今月からもう1フロア借りて100名体制までは入れるようにした。セミナー等でも利用予定なので、機会があればぜひオフィスにお立ち寄り頂ければと思う。
また、当機構が個人投資家向けに提供している、インパクト投資の参加機会についてより詳しくご説明する「事業承継インパクト投資セミナー」(オンライン開催主体)を、11月7日を皮切りとして、当面の間毎月行う予定としている。ご関心がおありの方は、当機構HPからエントリーの上でご参加頂ければと思う。(https://jigyosyokei.co.jp/company/seminar/#link-seminar)
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皆様のご参加をお待ちしています。