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「社会問題を、機会に変える」インパクト投資としての事業承継未来ファンド

2023年5月29日に、金融庁が環境・社会課題の解決と投資リターンの両立をめざす「インパクト投資」の検討会を開き、その結果を発表した。(結果は https://www.fsa.go.jp/singi/impact/siryou/20230529.html で公開されている)

その中で、インパクト投資には効果と収益性の明確化を求めるなど、4つの要件を初めて定めた。ESG投資で詐欺まがいの「ESG投信」が乱立し、「ESGウオッシュ」などという言葉が出てきたことへの反省もあるのだろうが、個人的にはとてもよい動きだと思っている。

投資の世界は常に玉石混交だ。ホンモノもあるが、ニセモノも必ず入ってくる。当機構が運用する事業承継未来ファンドは、まさに「社会課題の解決と投資リターンの両立をめざす」ファンドであり、ホンモノ中のホンモノであり続けることを目指しているが、その反面、どうしてもニセモノが出てくることは避けられない。だが、ニセモノが出てくると、なんだか全てがうさんくさくなるので、ホンモノも普及しにくくなる。そして、ホンモノが普及しにくくなると、結果として悪貨が良貨を駆逐してしまい、意図した効果が出なくなる。

だから、その区分けをきちんとしておくことは、とても重要だ。その意味で、金融庁が今回区分けについてまで踏み込んだ見解を出したことは、一種の快挙だと思っている。そこで今回は、当機構が提供しているインパクト投資について、書いていきたい。

まず、金融庁が発表した4つの要件とは、以下のとおりである。
(1)効果・収益性を事前に明確化(意図)
(2)具体的な効果・収益性の見込み(追加性)
(3)効果の事後的な確認(特定・測定・管理)
(4)市場や顧客に変化をもたらすイノベーション(新規性)

これを当機構の事業承継未来ファンドに例えると、例えばこんな表現になるだろう。
(1)効果・収益性:事業承継問題の全面的解決を通じ、子や孫のために雇用と経済を残すことを目的とする。「社会課題の解決と、投資リターン、黒字事業化」を並立させるために、10年超かけて試行錯誤しながら構想を練り、精緻な事業計画を作り上げ、事業承継問題の第3の解決策(第1はM&A、第2はファンドだ)としての「永久保有モデル」を自社開発してから、 4年半前に事業化
(2)具体的な効果・収益性の見込み:当機構が1社を承継して残す毎に平均20人の雇用と、5億円程度の経済を残す。投資家には、投資期間10年で年率3-4%程度のリターンを提供する
(3)効果の事後的な確認(特定・測定・管理):2023/3期までの4年半の活動の効果として、13社を承継し、雇用約600人(1社あたり46人)、経済74億円(1社あたり5.7億円)を維持するインパクトを創出(1社あたりの雇用数が多かったのは想定より多くの従業員を抱える企業があったためであるが、想定していた誤差の範囲内)。投資効果としては、個人投資家の投資1口(100万円)あたりで、約1.2人の雇用維持、2.8人の生活維持、1653万円/年の経済維持(≒約300~400万円/年の税収維持)に貢献している。加えて、各企業で働く人の働き甲斐の維持や、各社固有の技術の維持等、ソフト面の効果も創出している。投資の収益性としても、これまでのところ概ね当初想定した範囲で推移している。
(4)市場や顧客に変化をもたらすイノベーション(新規性):当機構の設立時に意図した通り、当機構設立後に多くの類似企業が「永久保有モデル」を模倣し、市場に参入している。他社の市場参入を排除して利益を独占するクローズドモデルではなく、銀行や大企業とオープンに共同してより早く広く普及させることで大きな社会インパクトを出す事業モデルを意図的に構築している。また、他のプレーヤーの参加もしやすくすることで、1民間企業である当機構の成功(=ユニコーン化)という小さなインパクトに留まらずに、より多くの中小企業の事業承継問題を早く広く解決し、「子や孫のために、雇用と経済を残す」という巨大な社会インパクトを創出することを目指している。同時に、40名超のシニアや女性にも活躍の場を提供することで、雇用問題にもリアルな社会インパクトを創出している。

この文章を金融庁の方にお見せしたら、当機構のことをどのようにご判断されるだろうか?機会があればぜひ一度お聞きして見たいものだ。

だが、大事なのは、これからだ。4年半前の起業時には、どこの何べえかわからない、たった3人で始めた会社だった。その我々を信じてくれた多くの銀行や大企業とのご縁や、13の承継先とのご縁、さらにいまや40名を超えるようになった仲間を得て、当機構はベンチャーとして見ればユニコーンレベルの成長を遂げ、一定の社会インパクトも創出出来るようになった。(4年半のうち3年ほどが活動しにくいコロナ禍であったことに鑑みれば、1民間企業としてみれば十分すぎる成功と言えるレベルのものだとは思う)。

それでも、我々が目標とする5000社に対しては、まだたったの0.26%にすぎない。この市場はTAMが非常に大きくプレーヤーが少ないブルーオーシャンであり、ホワイトペーパーの市場なのだ。いまだに100万社を超える企業が事業承継問題を抱え、そのほとんどが解決策を見つけられていないという深刻な状況にある。そして、創業者の平均年齢は上がり続けており、次の10年では平均寿命に届きかねない事態になっている。だからこそ、我々は小さな成功に満足することなく、今後さらに加速して、我々の事業承継プラットフォーム®をより早く広く、多くの中小企業にお届けし、ご活用いただけるようにしなければならない。そこまでしなければ、子や孫のために雇用と経済を残していかなければならないのだ。

事務所が手狭になったこともあり、7月1日から、近所でもう少し広い事務所に移ることとなった。8/2(水)には、創業時からつい最近まで大変お世話になった澤上篤人氏(さわかみホールディングス代表)もお招きして、新オフィスで「支援者の会」(https://jigyosyokei.co.jp/news/3530/)を行うので、ご都合がつく方はぜひご参加頂きたい。

皆さんに支援頂いている当機構の活動状況を共有させて頂きながら、今後さらにどのように活動を早く広く拡大していくか、どうすれば子や孫により多くの雇用と経済を残していけるのか、ぜひ活発に意見交換させて頂ければと思う。

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