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事業承継問題は、他人事?

コロナが落ち着き、久しぶりに対面でセミナーを実施する機会が増えている。

が、とても気になることがある。

 

 

 

事業承継問題というと、「他人事」だと思っている方がほとんどということだ。

自分とは関係ない、異世界のことだとでも思っているのではないだろうか?


 

 

その一因は、M&A業者や人材紹介業者が、

「事業承継問題は後継者問題です」

というフェイクニュースを広告しすぎる点にもあるかもしれない。

 

 

 

だが、事業承継問題というのは、国民全体にかかわる、国家的な問題だ。

あなたにも、あなたの家族にも、子や孫にもかかわる身近な問題なのだ。

 

 

 

ある会社が困っている、という点の問題ではない。

「日本企業の1/3」が困っており、

「日本人の2/3以上」が影響を受ける、

という、面の問題なのだ。

 

 

 

数字をもって理解すれば、簡単にわかる。

 

 

 

日本の事業者数386万社のうち、127万社が事業承継問題を抱えている。

つまり、3社に1社は事業承継問題を抱えている。

 

 

 

これは、商店街で言えば、

3軒両隣のうち1軒が事業承継問題を抱えており、

解決せずに放置しておけば、

いずれ3社に1社は消えてなくなるということだ。

 

 

 

もし、あなたがオフィスビルのオーナーなら、

9階建のオフィスビルのうち、3フロアが空になる。

そして、二度と埋まらないということだ。

(点ではなく面で減るというのは、そういうことだ)

 

 

 

こう聞くと、少しは身近に感じられるだろうか?

 

 

 

だが、中小企業がなくなる影響は、不動産が空くだけでは済まない。

 

 

 

まず、働く場がなくなり、国民が生活に困る。

なくなる100万社が10人ずつ雇っていたら、

1000万人が失業することになる。

それは、日本の労働者の2割弱が失業するに等しい規模だ。

 

 

 

さらに、税収がなくなり、国や自治体が困る。

なくなる100万社が年1000万円ずつ税金を納めていたら、

年10兆円の税収がなくなる。

それは、日本の税収入の2割弱に相当する規模だ。

 

 

 

※中小企業とはいえ、多額の税金を納めている。

売上を上げれば消費税を払い、

設備を持てば固定資産税や自動車税等を払い、

給料を払えば間接的に所得税や社会保険料を負担している。

銀行から借金ををすれば、その利息に対する税金を間接的に負担している。

法人税など、その搾りかすから出た利益に対して生じる、ごく一部に過ぎない。

ここまで含めた統計は発表されていないために詳細は不明だが、

1社あたり1000万円という想定は、決して過大な想定ではない

(むしろそれでも過少かもしれない)と我々は考えている。

 

 

 

2割の雇用が失われ、2割の税収が失われるというのは、

大恐慌が発生する規模に等しい。

我々の試算によると、事業承継問題から生じる損失は、

あの東日本大震災が、毎年2回発生する位の規模になる。

そして、それが向こう20年間、ずっとつづく。

 

 

 

つまり、47都道府県のほぼすべてで1度ずつ、

東日本大震災と同等の被害が、全都道府県で起こるのに匹敵する。

(20年間で44回。そして、それはすでに、現在進行形で起こっている。)

 

 

 

さらに、その被害は、経済だけに留まらない。

 

 

 

日本の経済を土台として支えてきた中小企業には、

多くの技術、文化等が蓄積されている。

 

 

 

日本の大企業の産業競争力を支える、

「ものづくり」の中小企業はその代表例だ。

その技術や労働を安価に提供する土台がなくなれば、

日本の大企業とはいえバリューチェンが途切れて、

同等の製品提供が出来なくなる。

(大企業も、決して無関係ではいられない)。

 

 

 

ここは、比較的よく知られている事例だろう。

 

 

 

だが、たとえば、神社や寺院といった日本古来の宗教や、

そこで行われる神事やお祭りも、

中小企業に支えられていることを知っている人は、

どれだけいるだろう?

 

 

 

あるいは、多くの芸術家やスポーツ選手が、

中小企業によって支えられていることを、

どれだけの方がご存じだろうか?

 

 

 

大企業のサラリーマン社長にたとえいくら力があっても、

サラリーマン社長は、

自身の一存で、これらの分野に長年多額の寄付をすることは出来ない。

 

 

 

「自分だけに利益をよこせ、早くよこせ、より多くよこせ!」

行き過ぎた資本主義の中で、

こういった強欲な株主が増えてきた昨今では、

寄付などすると株主に対する背任と言われかねないからだ。

(実際に、大企業から文化や芸術、スポーツ等への寄付は、長年ずっと縮小傾向だ)

 

 

 

日本の文化や芸術、スポーツの分野においても、

隠れた土台となって支えてきたのは、

その存在に理解を示し、意気を感じて、

自分の一存で私財を投じてきた、

中小企業のオヤジたちなのだ。

 

 

 

その文化や芸術を陰で支えている中小企業がなくなると、

(そしてそんな腹のある、粋なオヤジがいなくなっていくと)

当然に文化や芸術、スポーツもすたれていく。

宗教家も芸術家も、スポーツ選手も、食わねば生きていけないからだ。

 

 

 

その残念な一例が、京都にある下鴨神社だ。

日本でも最上位の一角に位置する神社で、

私も数十回参拝に行っている大好きな神社だが、

おそらく中小企業の檀家が減り、

運営資金に不安があるのだろう。

 

 

 

代々引き継いできた、

深緑の立派な参道の一部を取り壊し、

近代的な商業マンションにしてしまった。

(そして、そこは高級物件として売りに出され、中国人が住んでいると聞く)

 

 

 

日本を代表する神社ですら、この状況だ。

コンビニを上回るほどある神社・寺院等の苦境は、容易に想像できよう。

事業承継問題は、これらの文化や芸術、スポーツを廃れさせてしまう、

一因にもなっているのだ。

 

 

 

さらに、国防や治安にも関係する。

我々のもとには、自衛隊の軍船を補修・メンテする企業や、

大手発電所の維持・修理をするような企業の方が、

事業承継の相談にお見えになる。

(これらの企業から相談を受けるとき、私はいつも、背が凍る思いをする)

 

 

 

創業者が、日本の未来を思い、

たまたま当機構のことを見つけてくれたからいいようなものの、

もし創業者や株主が、

お金を得ることを優先してファンドに企業を売却し、

そのファンドがより多くのお金を得るために、中国やロシアの企業に転売したらどうなるか?

(そういう企業になら、彼らは喜んで大金を払うだろう)

日本の国防や治安に、大きな穴が空いてしまうのではないか?

 

 

 

さらにもうひとつ、SDGsやESGの分野でも、

実は中小企業は大きな役割を果たしている。

特に、「10.不平等をなくそう」という分野だ。

 

 

 

日本の大企業は、

企業数の0.3%ほどで、

雇用の3割、経済の5割を占めている。

 

 

 

裏返すと、

大企業で働く人は少数派で、

7割の人は中小企業で働いている。

いわば、中小企業は社会的なセーフティーネットとして、

多くの人に雇用の場を提供しているのだ。

 

 

 

そして、大企業が生む5割の経済価値も、

中小企業がその下請けとしているからこそ、

(安く、長く、でもよいものを生んでいるからこそ)

生じる価値が多分に含まれている。

中小企業が大企業を(そして国を)支えているというのは、

けっしてお飾りの文言ではなく、現金ベースの事実なのだ。

 

 

 

国民の7割に、

生活の糧を得る場を提供して、

生きがいをもって働ける場を提供し、

かつ大企業の高い生産性を支えているのが、

中小企業だ。

 

 

 

また、これらの中小企業が、

社会的なセーフティーネットになっているから、

日本は総中流社会を築くことが出来たのだ。

 

 

 

だが、事業承継問題を放置しておくと、

その雇用も、経済も、

そして社会的なセーフティーネットも、

どんどん壊れていく。

 

 

 

ただでさえ、人手を必要としないデジタル化が進み、

産業構造的に労働分配率が急低下し、

その結果、収入差が天地ほど開いてしまう傾向があるこの時代に、

さらに自ら社会的なセーフティーネットを破壊してしまえば、

どうなるか?

 

 

 

日本でも、アメリカや中国のように、

是正できないほどの巨大な格差・不平等性が生じることになる。

そして、いずれ両国と同様に、

大多数の国民が不平等感・不満感を抱え、

それを武力で抑圧せざるを得ない社会になってしまうだろう。

 

 

 

それは、かつて「世界で最も残すべき民族」と言われた日本人を、

そして「世界でもっと称賛されている」日本という国を、

我々の世代で、日本人が自ら終わらせてしまうことである。

 

 

 

事業承継問題とは、これほどまでに広く、深い問題なのだ。

そして、事業承継問題は他人事ではないということが、

少しはご理解頂けただろうか?

 

 

 

お金を稼ぐことを、否定するつもりはない。

(我々も、望まずとも資本主義の世界で生きているのは、事実だ)

 

 

 

だが、お金を稼げば、それでよいのか?

ヒトとして、より大事にすべきものも、あるのではないか?

そして、せめて全面的には参加出来なくとも、

せめて自分の子や孫のためには、

たとえば自身の人生や資産の10%程度を投じて、

ヒトとして正しいことをしてはどうか?

 

 

 

事業承継問題は、ビジネスの問題ではない。

(営利目的のビジネスでは、ごく一部しか解決できない)

環境問題や格差問題と同じように、SDGsの問題だ。

 

 

 

それはもちろん、簡単な問題ではない。

 

 

 

だが、やらなければ、我々の子や孫の未来がなくなるのだ。

 

 

それを、

儲からないからやらない?

難しいからやらない?

あるいは、楽しくないからやらない?

 

 

 

それは、資本主義において正しいのかもしれないが、

ヒトとして正しいのだろうか?

 

 

 

個人の価値観によって意見は異なるだろうが、

我々は、それは正しくないと考えている。

 

 

 

やらなければならないことなら、

たとえどんなに難しくとも、儲からなくとも、しんどくとも、

やるべきだ。

誰もやらないなら、自らやろう。

 

 

 

そう考えて、全面的解決に挑戦することにした。

 

 

 

そして、自分たちの力だけでは解決できないほどの大きな問題だから、

同じ志を持つ方々が、様々な方法で活動に参加できるように、

事業承継プラットフォームを開発した。

 

 

 

中小企業で働きたいという方には、具体的に働く方法を提供する。

 

中小企業に協力したいという方には、具体的に協力できる方法を。

 

投資家として協力したいという方には、投資できる方法を。

(12/1から募集を開始した、「Yamatoさわかみ事業承継未来ファンド」

 https://jigyosyokei.co.jp/siensya/ はその1例だ)

 

シニア活躍推進や事業機会として取り組みたいという企業には、その機会を。

 

そして、地域を守ろうという自治体や金融機関には、その具体的な方法を。

 

 

 

「愛の反対は、無関心だ」とマザー・テレサは言った。

子や孫に対して無関心な人が、代々増えてきているのは、残念ながら真実だろう。

 

 

 

だが、まだ日本人には、

子や孫のことを思う美しい心が残っていると、我々は信じている。

 

 

 

そして、現在日本を預かっている我々現役世代には、

我々の先祖が我々のためにしてくれたように、

我々の子や孫のために、よりよい日本を残していく責務があるとも感じている。

 

 

 

同じ思いを持つ方々には、

我々の活動に参加できるように、

多くの手段を提供していく。

 

 

 

そして、多くの力を結集することで、

事業承継問題という国家的課題の全面的解決に挑んでいく。

 

 

 

まずは、当機構のような方法があることを、多くの方に知って頂きたい。

(より知りたい方には、ぜひ12/8のセミナーや説明会にご参加頂きたい)

 

 

 

そして、行動できる方は、さっそく行動しよう。

 

 

 

子や孫に、未来を残すために。

 

 

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