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長期投資、直接金融と事業承継 前編

昨晩、第10回の支援者の会を、さわかみ本社4階で開催した。

 

 

 

支援者の会は、基本的に二部制となっており、

第一部では、さわかみ投信取締役の澤上会長と、

当機構社長の吉川から当機構の理念や事業についてご説明している。

その後、第二部では、毎回外部のゲストを招いて、

公開ディスカッションを行っている。

 

 

 

その第二部の内容が、

とても興味深いものだったのでご紹介しておきたい。

 

 

 

昨晩のゲストは、セゾン投信代表取締役会長CEOの中野晴啓氏であった。

 

 

 

中野氏は、クレディセゾンを母体として、

ご本人曰く「さわかみ投信の弟分」にあたる、

国際型の長期投資ファンドを設立し、運用している方だ。

 

 

 

「つみたて王子」としても有名で、

TVや新聞等でも広く取り上げられている有名人なので、

ご存じの方もいるかもしれない。

 

 

 

その中野氏とのディスカッションの中で、

特に面白かったのが、下記の2点だ。

 

 

1.本来あるべき長期投資とは?

2.本当の直接金融とは?

 

 

以下、2回に分けて、順を追って話していこう。

 

 

 

1.本来あるべき長期投資とは?

 

 

 

澤上会長も中野氏も長期投資の専門家なので、

まず話題は長期投資から始まった。

 

 

 

そもそも投資とは、「資本を投ずる」と書く。

自らが持っている資本(=おカネ)を、

自らが正しいと考える会社や事業に投じることを指す。

 

 

 

その投資の結果、

価値ある製品やサービスが生まれ、

投資家にも社会にも「生活の向上・改善」という、

社会的なリターンがまず生まれる。

 

 

 

その社会的なリターンが生まれた結果として、

企業/事業が儲かり、

株主としての経済的なリターン(≒株価の向上や配当)が生まれる。

 

 

 

当たり前のように聞こえるかもしれないが、

この順番が、とても大切。

 

 

 

「逆ではない」のだ。

 

 

 

だが、今の世の中、

ともすると逆を行って憚らない、

「なんちゃってファンド」が大半を占めるようになってしまった。

 

 

 

どういうことか?

 

 

 

「社会的なリターン(≒公益)を求めて、資本を投じる」のではなく、

「株主としてのリターン(≒私益)を求めて、資本を投じる」ファンドが、

大半になっているのだ。

 

 

 

長期投資とは真逆にある、いわば「短期投資」のファンドだ。

一部のアクティビストやヘッジファンドなどがその代表例と言える。

 

 

 

資本主義の世界だから?

株主として当然の権利?

そうではない。

 

 

 

本来、資本主義とは、

そんなに醜悪な、軽い、短いお金のシステムではない。

 

 

 

資本主義の中で、

私利私欲にまみれ過ぎて自らの「カネカネ」しか考えなくなった人が、

株主としての法的な権利に悪乗りして、

目先の自分だけの利益を追求してしまっているだけだ。

 

 

 

その「短期投資」が大半を占める結果、

何が起こっているか?

 

 

 

本来の投資から生まれるべき、

「社会的なリターン」が生まれなくなっているのだ。

 

 

 

世の中は、農場の原則に基づいて動いている。

 

 

 

自ら植え、苦労して育てることをせずに、

過去の人が植えたものの刈り取りばかりをしていたら、

いつか作物はなくなって、

最後には飢え死にしてしまう。

 

 

 

子供「なら」わかる、当たり前のことだ。

 

 

 

ところが、現在の資本市場では、

それがあたかも正当化され、堂々と為されている。

 

 

 

「四半期ごとの利益計上要求」

「将来を犠牲にし、サステイナビリティなど一切考えない、人件費や研究費の削減要求」

「受け取ったら株を売却する「食い逃げ」を前提とした、多額の一時配当金の支払い要求」

「安値の株を買い集め、高値での買取を、脅迫的に経営陣に要求」

 

 

等々の行為は、その一例だ。

 

 

 

このような「なんちゃって短期株主」のプレッシャーを受けて

経営を行う上場企業の経営陣は、

たまったものではないだろう。

 

 

 

株主は、役員の選任を含めて絶大な権利をもっているので、無視するわけにはいかない。

だが、その要求は、まともな人の職業倫理には反し、社会的に見ても正しくない。

 

 

 

経営陣がまともな方々であればあるほど、

突然現れた私利私欲にまみれた「オレ様株主様」に仕えるのは、

大変な苦痛であり、苦労だろう。

 

 

 

経営陣を応援するどころか、

経営陣の足を引っ張るこのような短期株主の元では

たとえどれほど優秀な経営陣であっても、

本来の経営能力などなかなか発揮できるものではない。

 

 

 

有史以来、つい50年ほど前まで、

長いことおカネは本来あるべき投資のスタイルで、

世の中を巡ってきた。

 

 

 

だから、世の中は長期間にわたり発展してきたし、

長期投資家にもきちんと正当なリターンがもたらされてきた。

 

 

 

おかしくなったのは、

「資本主義」が貪欲になり過ぎた結果、

本来黒子として社会を支えてきた「金融」が力を持ちすぎ、

前面に出てしまっているここ50年程の話だ。

 

 

 

その流れを糺し、

世の中をあるべき姿に戻すためには、

やはり長期投資が必要なのだ。

 

 

 

富を増やしたければ、まず富を植え、育てることが必要だ。

皆が自分のことだけを考え、

先人や他人から奪うような現状の行為を続けていけば、

最終的に富が縮小し、

皆が貧困化していくのは、当然の帰結なのだ。

 

 

 

さわかみ投信やセゾン投信をはじめとする長期投資が占めるシェアは、

まだわずか2%ほどだという。

 

 

 

だが、これが20%、30%となれば、世の中は劇的に変わるだろう。

 

 

 

そして、それは当機構が手掛ける未上場企業の事業承継でも同じことだ。

 

 

 

だから、我々は「質の良い資本」の提供にこだわるし、こだわり続ける。

 

 

 

お金に色はない?

自分だけ儲かればいい?

そういう方のお金は、どこか別の世界で扱ってもらえばいい。

 

 

 

我々がお預かりして運用していくおカネには、

「色があり、重みがあり、意思がある」

と私は考えている。

 

 

 

だから、その思いにこたえるために、

我々は真剣に働いている。

その大事なお金をお預かりし、運用するから、

ただ「自分の金儲けのために」やる以上の使命感が生じ、

1人で取り組む以上の力が湧いてくる。

 

 

 

「株主は絶対的な権限を持つ。だからこそ、自制しなければならない」

 

 

 

今の「短期株主」には、昔のお殿様と同じ学びが必要だろう。

 

 

 

絶対的な権限を持つ人であればあるほど、

熟慮し、自制して、公益のために、

行動しなければならない。

 

 

 

それが、社会のためにも、本人のためにも、

長期的に栄える唯一の道だからだ。

 

 

 

それを無視して、周りを顧みずに、

自分のことだけを考えて行動した

殿様はどうなるか?

 

 

 

歴史に学べば、いくらでも事例がある。

例外なく、よい結果を迎えることはないのだ。

 

 

 

長くなってしまったので、

「2.本当の直接金融とは?」については、

次回に記載しよう。

 

 

 

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