米国大統領選は、民主党、ジョー・バイデン氏の勝利になったようだ。
だが、事前想定以上の接戦になり、
バイデン氏の7500万票に対して、
トランプ氏も7100万もの票を集めた。
これはともに、2008年のオバマ氏が得た6949万票を上回っている。
また、トランプ氏は、前回投票時より800万票(12%)も
上乗せしている。
これは(私の予想に反して)、
トランプ大統領の4年間を否定する人よりも肯定する人が多かった、
とも言えそうだ。
さて、ここで前回途中になってしまった、
「資本主義が民主主義を凌駕している」という点の、
もう一つの事例を示そう。
それは、人口に占める有権者の比率が年々落ちており、
民主主義の抑止力、牽制力が弱まっていることだ。
これは、「シルバー民主主義」とも呼ばれ、
軒並み出生率が低下傾向にある先進国における、
世界共通の課題でもある。
どういうことか?
前回、米国の人口は3.28億人だと書いた。
計算してみればわかるが、
実は大統領になるのに必要なのは、
全国民の多数決=過半数(1/2以上)
の票ではない。
1/4~1/5の票を集めれば(≒カネで買えば)、
大統領になれてしまうのだ。
実際、今回バイデン氏が獲得した7500万票というのは、
全国民の22.86%に過ぎない(7500/32800)。
いや、そもそも史上最多の投票数と言われるが、
両陣営足しても44.51%の人しか、
(つまり国民の半分以下しか)
投票していないのだ。
これが、資本主義のブレーキとなるべき民主主義の力を、
そして長期志向をする若い世代の力を弱めている、
もう一つの原因だ。
民主主義は、人口の(特に若い人の)増加を前提としている。
若者が多ければ、長期を考える有権者が多数を占め、
長期最適の政策、政治家が選ばれるからだ。
だが、先進国の人口はピークを越え、
今やどの先進国でも人口ピラミッドは逆三角形だ。
そうなると、
長期を考える必要が必ずしもない人もいる、
高齢者が多数を占めることになる。
(子や孫の未来を考える立派な高齢者も大勢いる。
だが、皆が皆、そうではないということだ。)
その結果、短期最適を志向し、
「自分の世代が良ければ、あとは知らん」
という有権者は、昔よりも確実に増えている。
すると、そのような短期最適でも長期的に破滅につながる政策や、
それを通す政治家が、
選挙に勝てるようになってしまう。
環境問題、格差問題、、、例を挙げればきりがないほどだ。
そして、事業承継問題もまた、この問題の1つなのだ。
そして、この仕組みを変えるのは、とても難しい。
なぜなら、1/4以下の票というのは、
大部分の高齢者の票を集めれば、
若者を無視しても集められてしまう。
その1/4の高齢者がすべてを決められる権利を持つ中で、
かつそれがまだ昔の民主主義同様に「公平な多数決」と認識され、
子や孫には教科書でそう刷り込まれている現実世界の中で、
(教科書の内容を決めるのも、高齢者だ)
子や孫が高齢者の権利を奪うこと、
もしくは放棄してもらうことは、とても困難だ。
高齢者は自らの利権を手放したくないだろうし、
政治家も、高齢者票を失って失業するリスクは取れないからだ。
この制度改革を出来る人は、
本当の「国士」だと思うが、
今の日本の政治家に、誰かいるだろうか?
いや、世界の政治家においても、いるのだろうか?
(いないから、78歳という、米国史上最高齢の大統領が生まれたのか?)
このシルバー民主主義の中では、
未成年の環境活動家のグレタ・トゥーンベリ氏がどれだけ声を荒げても、
そして政治家がその声を聴くふりをしたとしても、
実際の政治行動にはつながらず、世の中の大半は変わらないだろう。
なぜなら、彼女は選挙権を持たないからだ。
そして、彼女が選挙権を持つ頃には、
今の政治家はこの世を去っている。
もはやその時は手遅れで、
環境問題は手の打ちようがない事態になっているだろう。
このシルバー民主主義問題の解決のために、
私は日本の政治家の知人に、こんな提案をしたことがある。
「日本人は、みな平等と憲法で定められている。
だが、人生最初の18年間は投票権を持てない。
(2016年に改正されるまでは20歳だった)
ならば、人生最後の18年も、選挙権を持つべきではないのではないか?
平均寿命ー18歳の年で選挙権を返すようにすれば、
(もしくはその子や孫に強制的に委託するようにすれば)、
シルバー民主主義の弊害は緩和できるのではないか?」
彼は、「良いアイデアだ」と言った。
いつか、彼が力をつけたとき、
国士として実現させてくれることを願っている。
そして、前回の最後の答えだ。
「このままだと、今後どうなるのか?」
「我々はどうすべきなのか?」
答えは、実はシンプルだ。
このままだと、日本でも数百年ぶりに、
「一揆」が起こる事態になるだろう。
欧米流に言えば「革命」が起こるし、
中国で言えば「反乱」が起こるだろう。
(一揆のきっかけは大抵、天災で人民が飢えることだ。
近年頻発する天災が、その前兆でないことを祈っている)
それは、世界の歴史が何度も証明してきた事実だ。
(それを最もよく理解し、警戒しているのは、
歴史上最も反乱が多い国である中国の習近平氏だろう。
彼が資本主義の混乱の中で比較的ましな対応が出来ているのも、
中国の歴史に学べば、理解できる点は多い)
資本と政治の両方の権力がごく一分の人に集まれば、
それは必ず腐敗する。
「権力は腐敗する。絶対的権力は、絶対に腐敗する」
というアクトン卿の言葉は、
19世紀イギリスで生まれた言葉だが、
令和になった日本でも、変わらない真実なのだ。
では、それを防ぐにはどうするのか?
キーワードは、「長期最適」だ。
ある日の日本経済新聞で、
元欧州復興開発銀行総裁のジャック・アタリ氏が、
「今の我々に必要なのは、次世代の利益を考えて行動する社会だ。
すなわち、自分の決定は次世代に利益をもたらすのか……だ」
と書いていた。
また、同じ紙面に、元FRB議長のアラン・グリーンスパン氏が、
「高齢化による福祉大国化が、世界の進歩を妨げている。
資本主義以外に最善のシステムはないが、資本主義は格差を生み出す」
とインタビューに答えていた。
イギリスの元首相、ウィンストン・チャーチルの言葉に倣えば、
こういうことだ。
「民主主義は最悪の政治形態だ。
これまでに試みられてきた民主主義以外の、
あらゆる政治形態を除けば、だが」
民主主義と政治形態を、
資本主義と経済形態という言葉に置き換えれば、資本主義
にも同じことが言える。
つまり、企業としては、
目をドルマークにして、自社や株主の利益のためだけに、
亡者のように際限なく1億、10億、100億と求めるのではなく、
「儲けすぎない勇気」をもって、「よい塩梅」で満足すること。
(事業承継問題に例えれば、
別に日本最高の平均年収を取らずとも、
高いリスクを会社に負わせて年利20%超の高リターンを求めずとも、
事業承継問題は解決できるということだ)
個人で言えば、
資本主義で肯定され、法律に触れないからといって、
「自分さえよければいい」
「違法ではない」
「みんなしている」
と言い分けしながら生きるのをきっぱりと止め、
古くから日本人が大事にしてきた価値観である
「恥」「名誉」「誇り」
そして
「ご先祖様のため」「子孫のため」「お国のため」
という、
おそらく日本人なら皆持っている(と私は信じる)
美意識を取り戻し、大切にして生きることだ。
この2回のブログで書いた通り、
当機構が掲げる5000社の事業承継への挑戦は、
世界の主流である民主主義、資本主義という、
2つの主義の欠点を補完するための、挑戦でもある。
それが、「子や孫、ひ孫のために必要な、残すべき企業を残す」
という挑戦の、もう1つの意味なのだ。
それは、もちろんカンタンなことではない。
いや、現代の人類が抱える中でも、
最も困難な問題の1つなのかもしれない。
ただ、この問題も、誰かが最初にやらなければならない。
なら、どれほどの困難があろうとも、まず我々が腹をくくってやろう。
最初は少数で構わない。
本気でやろうと思う人だけを集めて、どんどん動こう。
もし、我々と一緒に動こう、やってみようと思う方がいたら、
ぜひ当機構HPからご応募ください。