先日、ある新聞記者の方からこんな質問を受けた。
面白い質問だと思った。
「新しい企業」という意味では、そうだ。
「今の世の中に存在していない、新たな挑戦をしている企業」
という意味でもそうだろう。
ただ、
「IPOを目指しているのか?」
「創業者が億万長者になることを目指しているのか?」
という点では、全然違う。
「利益目的なのか?」
という点でも、違う。
当機構においては、「株主」も「利益」も、
事業の構成要素ではあるが、最優先すべきものではない。
わかりにくいし、記事にしにくい組織だろう?
そう言ったら、新聞記者も苦笑していた。
ただ、一つはっきりしていることがある。
当機構が最優先するのは、子や孫の未来だ。
そのために、
①「長年存在している、子や孫の世代にも必要な、ないと困る企業」
を残すことが、今の当機構の優先的な活動だ。
その対極にあるのが、
②「最近生まれた、あったら便利で、儲かりそうな企業」だ。
①と②の違いを、例を挙げて説明しよう。
たとえば①と当機構が考え、
事業承継に優先的に取り組んでいる企業の一例として、
下記のような企業がある。
・豪雪地帯で、道路の除雪等を50年近く担ってきた企業
・水道場の運営を、30年に渡って支えてきた企業
・ガスの供給を、40年に渡って行ってきた企業
これらの企業は、おそらく成長はしないだろう。
根本的に、日本の人口が減る以上、商圏が減り、売上も減っていくからだ。
IPOなど、とても望めない。
だから、ファンドやベンチャーキャピタルも、当然に投資できない。
だが、これらの企業の事業承継に、当機構は優先的に取り組んでいる。
なぜか?
子や孫のために、必要な企業だからだ。
もし、これらの企業が承継されずに、消滅してしまったらどうなるか?
を考えてみるとわかりやすいだろう。
・道路が雪で埋まり、移動が出来なくなる。地域の交通や物流が遮断される。
・蛇口をひねってもきれいな水が出なくなる。衛生が悪化し、健康を害する。
・寒い地域でガス供給が止まれば、冬には死者が出るかもしれない。
これらの企業がなくなったら、
子や孫が生活に困ることは、容易に想像できるだろう?
最悪、命を落とすことにつながるのだ。
だから、我々は、こういう①の企業の事業承継に優先的に取り組んでいる。
これに対し、②に多いのは、こんな企業だ。
・創業3年、流行りのスマホゲームを開発/運営する企業
・5年前に出来た、人気のスマホアプリを開発/運営する企業
・去年できた、その周辺分野である技術やネット広告の会社
・大学発で、まだ法人設立手続中の、ビッグデータを扱うAIの会社
いわゆる、ベンチャーと言われる企業だ。
もちろん、これらのベンチャー企業にも、存在価値はある。
より楽しくて、より便利なことをつくってくれる会社を、否定する気はない。
だが、これらの企業がないと、本当に子や孫が困るだろうか?
ゲームが出来ないと困る?
アプリがないと困る?
ネットの新技術や、広告がないと困る?
データがないと困る?
それがなければ、子や孫が命を落とすことになる?
そんなことは、、、おそらくないだろう。
我々の祖先は、②の企業が無くとも、長いこと暮らしてきたのだから。
我々の子孫も、②の企業が無くても、生活に困ることはないだろう。
ここに、当機構の大きな社会的挑戦が、一つある。
①への「お金の流れを創る」という挑戦だ。
今の資本主義下の投資は、②への投資が殆どだ。
「新事業」「新技術」という言葉は、耳触りがよいし、
なんとなくセクシーで、言ってて気持ちいいからだろう。
私の経験上でも、大企業内の稟議受けもとてもよい。
「イメージがよく、早く、楽に、儲かりそう」だから、
②には今はバブルと言える程のお金が集まり、あふれている。
だが、子や孫の未来にとって本当に大切な事業は、
そんなセクシーな、耳触りがよいものばかりではない。
本当に大切な事業は、
地味で、地道で、そんなに楽には儲からない。
だが、①にはお金が流れていない。
(その導線すら、整備されていないのが現状だ)
日本の企業投資を集合としてみると、我々は、
贅沢や娯楽(あるいは大企業なら海外)のためにお金を使っているのに、
なくなったら命にかかわるような重要な役割を実社会において果たしている
日々の生活に必要な会社を残すためには、ほとんどお金を使っていないのだ。
誤解を恐れずに言うと、
まるで恩知らずの道楽息子のような行動をしているのだ。
このままでは、落ちぶれていくのは当然だ。
だから、当機構は、本当に必要な①のために、
「あたらしいお金の流れ」を自ら創ることにした。
マネックスの松本大氏が同社を創ったのは、
銀行に偏っている今の日本の「お金の流れを変える」
ためだったらしい。
当機構の挑戦も、同じだ。
本当に必要な企業を承継するための、
「新しいお金の流れを創ること」。
それが、本当に生活に必要な企業を残し、
子や孫に未来を残すためには、必要なのだ。
来年は、これまで準備してきた
「新しいお金の流れ」の仕組みを、
本格稼働させていこうと思っている。