結論から言おう。99%はできない。
なぜか?理由は3つある。①規模、②転売、③優先順位、だ。
①規模
私はファンドを否定する気はない。
それどころか、ファンドは、「大企業相手のカーブアウトの受け皿」という本分においては、
資本主義の権化であり、至境のマネーマシーンだと評価している。
「大企業相手」に効率よく金を稼ぐことだけが目的なら、これ以上のビジネスはない。
なにせ、どれ1つとっても十分に儲かるビジネスを4つ(法務 × 税務 × コンサル × 金融)も重ねあわせ、
かつ資本主義のルール下で全権を持つ株主として、自らその機会を自由に収奪できるのだから、、、
儲からないわけがない。
それは、1976年に世界のPEファンドの始祖であるKKRが生まれ、
この競争が厳しい時代においても40年以上もサメのように生まれた当時の姿をほぼ変えずに成長し、
今や世界の上位1/4に入る国家に匹敵するほどの資金を有していることや、
世界の富豪10000人を上から並べるとその3割以上がファンドビジネスのプレイヤーであることでも証明されている。
ただ、ファンドビジネスが通用するのは、「大企業相手」の場合だ。
「中小企業相手」では、実はあまりよいビジネスではない。。。特に、事業承継では。
実際、中小企業を相手にしたファンドビジネスは、官民問わず、失敗の山だ。
8割以上は、失敗して潰れたか、鳴かず飛ばずかだ。
そして、成功した数少ないファンドも、規模を大きくして大企業相手に移っていく(その方がラクだし、儲かるから)。
つまり、中小企業だけを対象にし続けるファンドは、実は皆無なのだ。
その証拠に、世界の一流の巨大ファンドは、「中小企業の事業承継」などとは言わない。
ファンドビジネスには合わないことを、経験的に知っているからだ。
どんなによい薬でも、大人に処方する薬を、子供にそのまま処方したら、危険だろう?
鍛え抜かれたプロがやっているアクロバットを素人にやらせたら、けがをするだけだ。
一流シェフが作った料理のレシピに、素人がオリジナリティーを加えたら、たいていは台無しになる。
それなのに、中小企業相手に、事業承継をファンドで無理やりやろうとすると、こんなふうに矛盾する。
「当ファンドは、経常利益5億円以上の中小企業を対象に・・・」
中小企業の平均利益は600万円程しかないのに、だ。
経常利益が5億円あれば、規模的には東証1部に上場できる。
東証1部に上場できるということは、日本企業の上位0.1%に入る企業ということだ。
普通、これは「中堅企業」というのだと思う。
(この「中堅企業」相手なら、ファンドの仕組みはまだなんとか機能する)
つまり、99.9%の中小企業は、規模的にファンドの対象外だ。
②転売
ファンドは、預り金でビジネスをしている。
だから、3~5年程度の短期で、「転売」するのが大前提だ。
この「転売」が、中小企業の事業承継をしようとすると、非常に困難な難関になる。
まず、中小企業の買い手は、まだまだとても少ない。
前述の通り、ファンドは99%を対象外としている。
また、企業が買い手となる場合も、やはり大企業を対象とすることが殆どだ。
そうなると、転売を前提とするファンドは、売り先が見えないから、買えなくなる。
(そもそも「転売前提」の「事業承継」というのは、言葉がぶつかっている気もする。。)
転売先が見えないことが、転売を前提にしたファンドが事業承継を試用とするときの、第一の難関だ。
さらに、企業の仕組みの違いも、難関である。
たとえば、大企業の社長なら1期2年や2期4年で変わるのは普通で、企業もそれに耐えられる仕組みになっている。
(だから、大企業のカーブアウトはやりやすい)
だが、中小企業の創業者の社長は、30年以上同じ人で、変わったことがない。
(企業も、それに耐える仕組みになっていない)
そこで、急に社長が変わったらどうなるか?
まして、短期間の制限時間内に対応しなければならないとしたら?
それをやらなければならないのが、ファンドが事業承継をするときの難題だ。
時間をかけられれば、出来ること。
だが、時間の無いファンドで、短期間に無理にやろうとすれば、難易度があがり、失敗が多くなる。
また、仮に成功したとしても、短期間でやる分、従業員や取引先への負担は、ものすごく大きなものになる。
そして、短期での社長交代に成功したとしても、さらに難関がある。
今度は「転売」により、株主がかわる。
社長の後ろ盾であり、任命権を持つ株主が変われば、企業の方向性は変わる。
社長もまた交代になるかもしれない。
従業員や取引先に、また大きな負担がかかる。また企業に激震が走る。。
株主でもある創業社長が交代するのは、大企業で、時間を十分にかけてですら、難しい。
(ソフトバンクやファーストリテイリングの例を見ればよく分かる)
中小企業の場合にはより難しいのに、
そこにさらに時間制限という縛りを背負って挑むファンドが、多くの場合に失敗するのは、自明の理だろう。
3-5年で「転売」するのが前提のファンドでは、中小企業の事業承継をきちんとやるには、時間が足りないのだ。
③優先順位
ファンドの優先順位は、「出資者へのリターン」が第一で、「ファンド自らの利益」が第二だ。
第一は運用受託者としての当然の責任だし、第二は資本主義の世界で自らが生きる定めだからだ。
裏返すと、「対象会社の存続」「従業員の幸せ」「取引先の幸せ」「社会的価値の提供」などは、優先順位が低くなる。。。
(ファンドの善悪や嗜好の問題ではない。ファンドも構造的にそうするしかないのである)
ここで問題なのは、構造的に、ファンドがその分配の決定権を握る「株主」になってしまうことだ。
当然、出資者へのリターンと、ファンド自らの利益が優先され、他は後回しにされる。
結果、従業員がリストラされたり、
必要な設備投資が抑制されたり、
長く共同してきた取引先を目先の短期利益のために切り捨てたり、
地域貢献などの短期的利益にならないない社会的価値の提供がなされなくなったり、する。
100年単位で見れば、企業価値が破壊される。。。
こうして、長期利益を犠牲にして短期利益を上げたら、ファンドは短期で高値で転売し、いなくなる。
それがファンドの第一、第二の目的にかなうから、ファンドはそれでいい。
(ファンドも、真面目に仕事をすればするほど、それを徹底してやるしかないのだ)
だが、それで企業は永続するか?
終身雇用の従業員はどうなる?
長い時間をかけて築いてきた取引先は?
社会的価値の提供は?
短期利益を求めすぎれば、長期最適は失われる。。
でも、短期資本主義の権化として、出資者と自己の利益を貪欲に求めるファンドにとっては、そうするしかない。
そしてそのファンドが、資本主義下で全権を持つ王様である「株主」になってしまえば、誰も抗いようがない。
中小企業の事業承継をやるには、構造的にビジネスモデルが合っていないのだ。
この課題を解決するために、私は20年以上かけて、ファンドとは似て非なるビジネスモデルを創った。
①価値ある中小企業の全てを、子や孫の未来に残す(ビジネスとして儲かる1%だけではなく)
②転売しない(上場も目指さない)
③永久保有し、全ステイクホルダーの長期最適/長期利益を目指して経営する(6WIN)
それが、当機構の事業です。
ファンドとは、全く異なるのです。
私やさわかみ氏が学生時代にやっていたラグビーと、アメフトくらい、違うのです。
(わからない?この2つは、サッカーと野球くらい、違うのですよ?)