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事業承継問題は、他人事ではない。あと50年で平均年齢が30年延びるなら、シニア世代にとっても自分の問題

事業承継問題の解決が進まない一因に、どうしても「他人事」とされがちな点がある。あえて表現をあやふやにせずに直言すると、シニアの皆さんにとっては「死後のこと」、サラリーマンや同経営者にとっては「任期後のこと」、政治家にとっては「次世代のこと」、と思われがちだからだ。

ただ、サラリーマンや政治家にとってはともかく、シニアの皆さん個々人にとって「他人事」は本当に事実だろうか? そこで今回は、「事業承継問題は、シニアにとって自分事である可能性が高いこと」について問題提起させていただき、皆さんにご再考頂ければと思う。他人事ではなく自分事としてとらえることが出来れば、行動を変えられる方が出てくるきっかけになりうるからだ。

まず、事実から始めよう。厚生労働省の発表によると、日本人の平均年齢は男性81.41歳、女性87.45歳である。他方、サラリーマンの定年は60~65歳であるため、男性であればだいたい会社を卒業して15~20年で人生は終わりを迎えるというのが社会のノルムとなっている。シニアの皆さんの感覚とも、そうずれはないはずだ。

ところが、その寿命自体が、年々0.6歳ほど伸びていることはご存じだろうか? つまり、10年で6歳、20年で12歳、50年では30歳分も、寿命自体が延びているのである。要因は多岐にわたるが、主なものを3つあげてみよう。

まず1つ目が、技術の進化だ。最近医者に行かれた方は、以前と比べて「MRIを撮る」「CTを撮る」「内視鏡で見ましょう」と言うことが、格段に増えたことにお気づきではないだろうか? 20年前までは「血液検査をしましょう」「レントゲン取りますね」で済んでいた場面で、だ。最近話を聞いた医師が正直に話してくれたのだが、「今までは血液検査やレントゲンから推測するしかなかった。だが今は、目で見ることができる。だから、経験や能力に頼ることがなく診断ができるようになって難易度が下がり、誤診やミスも格段に減った。」要は技術進歩によって「見える化」が大幅に進んだ、ということだ。技術の進歩やそれに伴う人的ミスの減少によるだけでも、平均寿命は10年は伸びるだろう。

2つ目が、研究の進化だ。人体をDNAレベルで解析できるようになった2000年代以降、健康に関する研究は格段に進んだ。本屋に行けば、20年前と比べて健康に関する本は遥かに増えており、かつその内容も科学的根拠に乏しいあやしげなモノではなく、医師や大学教授によって科学的に検証された理論に大きく進化していることに気付くだろう。私自身も、まだ40代ではあるが、カロリーコントロールやバイオモニタリング、特定物質の定期接種などのバイオテクノロジーを生活に取り入れて実行しているが、すでに身体の変化をはっきりと感じ取れている。生活リズムを安定させ、動物性アミノ酸を減らし、食事でのカロリーと栄養コントロールをして、腸内環境を整えること。定期的に適度に負荷のかかる運動を行い、回復物質を十分にとったうえで、温湿度・光度を調整し、酸欠や音で熟睡を妨げられない環境で睡眠をとること、などがその例だ。実際にサルを使った実験では、カロリーコントロールだけで寿命が30%以上伸びた実験結果も報告されている。これらの研究成果は人類の英知の結晶であり、誰にでも活用できる書籍やウェブ上にある情報を適切に自分の健康管理に適用するだけでも、何も対策をしていない個体と比べて10年は寿命が伸びるだろうと実感している。

3つ目が、人体が内部生成できないものの必要な特定物質を、専門家の指導に従って適切に摂取するということが、徐々に一般人にも可能になってきていることだ。この点は、科学的根拠を自己責任で判断できる能力と知識が必要なこと、相応の費用がかかること、公的な認証が追いついておらずニセモノが多いために、見分けるノウハウや専門家が必要であることから、一般人にはまだハードルが高い領域だ。ただ、それでも月数万円くらいから出来ることはあるので、やはり取り組む方はそうでない方と比べて、10年は寿命を延ばすことが出来るだろう(詳しく知りたい方には、『LIFE SPAN』(東洋経済新報社)という書籍をお勧めする。)

上記3つを合わせると、少なくとも30年程度は寿命が延びてもおかしくない。

さて、ここで冒頭の「事業承継問題は他人事ではない」に戻りたい。皆さんの寿命が残り20年と(勝手に)思っているところ、実はまだ50年もあったら、どうなるだろうか? すなわち、今現在60歳の方が、80歳まであと20年生きると思っていたら、実は110歳まであと50年生きることが出来たら(人生はまだほぼ半分ということだ)、どうなるか? お金は? 生活は? そして、日本は? そこまで考えているシニアの方はどれだけいるだろうか?

過去に書いたことがあるが、事業承継問題は「2035年問題」でもある。2035年頃に、団塊の世代の起業家(=後継者不在の中小企業127万社のオーナーたち)が寿命を迎えるピークが来るからだ。事業承継問題の解決には1~5年という長い時間がかかるため、2030年までに解決に必要な投資や対策をしておかないと間に合わない。すなわち、あと5年程度でこれまでの数百倍以上のペースで必要な資金、人材を投下して備えないと、とても間に合わなくなる。

間に合わないとどうなるか? 雇用の7割と経済の5割を担う中小企業で、その3分の1にあたる127万社がろくな事前対策もなくリーダーを失って同時多発的に大混乱に至れば、まず雇用が崩壊する。失業者があふれれば、社会保険制度が破綻して、年金や健康保険制度が維持できなくなる。これが、主にシニアの皆さんにとって、他人事ではすまなくなるという第一の影響だ。

さらに、経済も混乱する。ピラミッド構造下で大企業を支えている中小企業が面で同時多発的に崩壊すれば、城郭の土台である石垣が一気に崩れるようなものだ。天守閣に位置する大企業も、それを石垣として支えるバリューチェーンがあちこちで同時多発的に崩壊すれば、大打撃を受ける。利益面への打撃で済めばまだよいが、根本的にコストや技術というバリューチェーンで代替策を用意できない大企業には、事業継続が困難になる先も出てくるだろう。BtoCの企業でも、雇用の7割を支える中小企業の従業員が失業して支出を抑えれば、消費が大幅に落ち込むことは容易に想定され、やはり打撃は免れない。大企業を通じての影響が第二の影響だろう。

最後に、日本の国や自治体にとって財政的な致命傷になりかねない。雇用の7割と経済の5割を占める中小企業で同時多発的に大混乱が起きるのを放置したら、失業者増で治安が乱れる中で、税収減で警察や消防、公的医療の経費がさらに嵩む。年金や健康保険を一時的に税で補っても、それを取り戻すべき中小企業や雇用からの税収が一度失われてしまえば、再建するのは容易ではない。さらに、年々悪化して強大になっている天災に対して、現時点でも予算不足で進んでいない治水強化や森林保全、道路やトンネルや橋の修繕、水道管の交換や電力施設更新などは、一層の予算不足で取り組めなくなり、公的インフラにおける事故や災害が多発することになるだろう。それは、安心・安全・便利な現在の日本人の生活水準が大幅に劣化することにつながりかねない。

シニアの方々は、自分たちの人生の最終ステージで、そんな日本に生きていたいと思うのだろうか? 子や孫の時代をそんな風にしないためには、事業承継問題の解決によりスピード感を持って取り組む必要がある。そして、その行動をすべき時は、もうすでに来ているのだ。代々続いてきた日本を預かる現世代として、そんなひどい状態の日本を子や孫の次世代に残すことがヒトとして正しいことだと思う人はいないだろう。ならば、自ら取り組んではどうか? 自ら取り組めないなら、我々が機会を用意するから労働参加してはどうか? 労働参加もかなわないなら、資本参加してはどうか? 自分が出来ることを考えて、行動すべき時は、もうすでに来ているのではないか? 自分にできる対策があるのに何も行動せずに、いざ災害が起こった時に後悔しても、時すでに遅し、なのだ。

JSKの中には、80代になっても元気に働いている方がいる。その中には、100歳まで生きることに備えて、80代から大学に通って新しい知識を学び、90代からはこれをやるという趣味の長期計画もお持ちで、100歳まで元気に生きていく人生計画をきちんと立てている方もいる(それでも足りないかもしれないが)。その方に寄れば「100才まで自分がやるべきことをきちんと考えて準備しておけば、長生きリスクに不安にならずに、人生をとことん楽しめる。その過程で、万一90歳で寿命を迎えたとしても、それは残念ではあるが、とくに問題はない。家族にも迷惑をかけずに、笑って逝ける」と考えているとのことだ。こういう生き方をするシニアが1人でも増えることが、本人のためにも、残される家族のためにも、ひいては日本や子や孫の未来のためになると願ってやまない。

年末に当たり(次回のメルマガは来年になると思うので)、一言ご挨拶申し上げる。本年も当機構のメンバー共々、皆様には大変お世話になりました。本当にありがとうございました。

当機構は、グループとして1000人以上の職を維持し、過去1年間に50億円以上の給料を支払える規模に成長した。支援者の皆さんの投資は、投資家としての年4%目標のリターンに加えて、中小企業の人々の雇用や生活を維持するために投資額1億円当たり毎年1億円の給料を維持し、その家族の生活を支える効果を生んでいる。投資期間の10年で考えたら、投資1億円あたり10億円の給料を生んでいるのだ。また、副次的には、国民の消費を生み出し、自治体や国の税収を助け、社会保険制度を支えており、その投資効果は幅広く波及している。当機構が投資してきた金額はまだ50億円弱にすぎないが、この金額を100億円、1000億円と大きくしていくことが出来れば、より大きな善のインパクトを生み出すことが出来るモデルはすでに構築済で、効果も実証できるようになってきた。当機構が扱う資金が拡大すれば、それはいずれ回りまわって、皆さん自身や子や孫の世代の生活を支える大きな力になるのだ。

2025年は巳年、お金の問題が解決する年だ。日本の事業承継問題をすべて解決するために、いま当機構が挑戦している100億円のファンド募集を成し遂げ、子や孫の未来、そして長生きされるであろうシニアの皆様の未来を守るべく、来年も全力で活動していきたいと考えている。

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