当機構は7/1付で、前の事務所と比べて約3倍の広さになる新事務所に移転した。皆様のご支援のおかげで、当機構は設立から4年半で13社を承継し、70億円を超える経済と600名を超える雇用を承継してきた。その結果、本社だけでも40名を超える猛者が集まっているため、さすがに20坪ほどの元のオフィスでは手狭になって、移転したわけだ。メンバー一同、新オフィスでますます事業承継問題の解決のために、日々忙しく取り組んでいる。
だが、我々には新オフィスで一息ついている暇など、一秒たりともない。なぜかというと、日本の事業承継問題は、以前よりも悪化していると言わざるを得ないからだ。データがそれを如実に示している。詳しくは、8/2の支援者の会でお話しようと思っているが、会場でのご参加が難しい方もいると思うので、今回はその概要だけご紹介しておきたい。
まず、いつもお話ししている通りだが、経済産業省の発表(https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/hikitugigl/2019/191107hikitugigl03_1.pdf)によると、日本には381万人の経営者がいる。そのうち、2025年までに経営者が70才(過去の社長の平均引退年齢)を超える企業が245万社あり、うち約半数の127万社が後継者未定の状態だ。そして、その127万社の内約半分の60万社は黒字であるとされており、この黒字の60万社が当機構が取り組んでいる「事業承継問題を解決すべき企業」だ。
問題なのは、この母集団の経営者の年齢の中央値の推移だ。1995年には47歳であったものが、20年後の2015年には66歳(+19歳)になっている。つまり、20年で5%ほどしか若返っていないのだ。それは、既存の親族内承継やM&A、ファンドの仕組では、事業承継問題のわずか数%しか解決出来ていないという当機構の仮説と合致する。
また、社長の年齢の中央値が47歳から66歳になるまでの間には、社長が寿命を迎えることはごく僅かだった。つまり、事業承継問題の悪影響(雇用や経済の減少等)が具現化することは、ほとんどなかった。だから、過去20年間はまだよかった。事業承継問題の解決が遅々として進まずとも、実体経済への事業承継問題の悪影響は、ごくわずかだったからだ。まだまだ、幸運な時代だったのだ。
ところが、不都合な真実が、この先にやってくる。経営者の年齢の中央値は(過去の傾向が続くと仮定すると)、2025年には76歳になり、2035年には85歳になる。つまり、厚生労働省が「簡易生命表(令和3年)」で発表している日本人の男性の平均寿命81.47歳を、2030年頃に超えてしまうわけだ。それは、社長が在職のまま、寿命で急逝するケースが急増しうることを意味する。そして、この時までに事業承継問題の対策を終えていないと、その悪影響がリアルに具現化することになる。
悪影響とは?具体的に何が起こるのか?社長が、事業承継問題に具体的な対策を何も出来ないまま急逝すると、中小企業の現場では大変な混乱が起こることが多い。実印の場所がわからない、銀行口座のお金が動かせない、パスワードがわからない、契約書がどこにあるかわからない、、、、そもそも、何をいくらでいくついつまでに受注しているのか、支払条件はどうなっているのかなどが、社長の口約束でしか残っていない企業も多い。多くの中小企業では、社長以外に誰も知らないことが、大量にある(そして、それは特例ではなく、よくあることだ)。だから、その上に成り立ってきた中小企業の経営は、社長が急逝すると、途端に成り立たなくなることも多い。
では、その不都合な真実は、どの程度のインパクトを引き起こすのか?これも、データから推計できるので、やってみよう。
まず、内閣府の発表(https://www5.cao.go.jp/keizai3/2020/0331nk/n20_3_2.html)によると、調査によって誤差はあるものの、2020年の休廃業や解散数は1万~3万社とされている。仮に最大の年3万社を平均とすると、日本の企業数381万社に対して、休廃業率は1%弱だ。この傾向が続くと仮定した場合、2023年から2033年までの「10年間累計で(約10%の)38万社強が休廃業する」計算になる(なお、休廃業する理由としても、経営者の高齢化・後継者不在というのは上位の理由だ)。
ところが、前述の通り、2030~2035年頃に平均寿命に達する社長の数は、「245万人」だ(つまり、この5年間は、毎年平均約50万人の社長が寿命を迎えることになる)。この「245万人-38万人=213万人」の社長が経営する中小企業は、どうなるのだろう?事業承継問題の対策が出来ていなければ、そのうちの多くの企業が、事業承継問題のリアルな悪影響に直面することになるだろう。その数、じつに年間42万社(213万/5年)だ。
もし社長が急逝したら、そのうちの多くの企業が、望まぬ形での経営の混乱や、休廃業に追い込まれてしまうだろう。その結果、2030年頃の休廃業件数は、今の数倍~10倍に急増する可能性もある。
言い換えると、このまま事業承継問題を放置すれば、今から7年ほど経過した2030年頃から、事業承継問題は山場を迎え、その真の悪影響が津波のごとく社会に大きな悪影響を与えることが、データから想定されるのだ。
これこそが、当機構が(というよりも、日本全体が)、一秒たりとも無駄をせずに、残っている90%以上の中小企業に事業承継問題解決の具体策を提供していかなければならないと考えている、真の理由だ。
そのために、我々は今後もさらに加速して、「3倍3倍」の拡大を目指して活動していく。それは、時限問題である「事業承継問題」をできる限り多く解決し、子や孫のために雇用と経済を残していくためだ。
なお、よく誤解されるが、我々は他のM&Aやファンド等の解決策を否定するつもりは、まったくない。社長がM&Aを良しとされるなら、M&Aで残せばいい。ファンドを良しとされるなら、ファンドで残せばいいと思っている。ただ、その2策では、9割以上の社長のニーズにはフィットしないことが多く、事業承継問題の解決につながっていない。そのため、当機構は第3の策として「事業承継プラットフォーム®」を開発し、提供しているのだ。
年率3倍3倍の成長というのは、いわゆるIT系のユニコーン企業でもかなり難しい、高い目標だ(それは、日々現場で事業に取り組んでいる我々が、誰よりもよく理解しているつもりだ)。だが、我々がいまこの使命を果たさなければ、日本の子や孫の未来は壊滅的に暗いものになる。それだけの中小企業(=雇用、経済、技術、etcetc)が失われ、そして一度失われたら2度と取り戻せないからだ。だが、我々が1社承継すれば、1社分だけ、10社承継すれば10社分だけ、子や孫に明るい未来を残すことが出来る。それならば、どれだけ困難を伴おうと(他人に何を言われようと)、高いムーンショット目標を掲げ、その実現を目指して、日々全力で泥臭く取り組む、というのが我々のスタンスだ。
8/2には、久々のリアル開催となる「支援者の会」を新オフィスで行う予定だ。澤上篤人氏、西澤民夫氏のほか、当機構承継先の幹部社員等もゲストにお招きして、会場で直接お話し頂ける形での交流会も予定している。ご都合が合う方は、ぜひこちら(https://jigyosyokei.co.jp/news/3530/)の「各種セミナーお申込み」のボタンからご登録いただき、ご参加ください。