「新しい資本主義」という提案が、日本の新総理からなされている。
内閣官房のHPによると、「成長と分配の好循環とコロナ後の新しい社会の開拓をコンセプトとした新しい資本主義を実現していくため、内閣に、新しい資本主義実現本部を設置する。」と書いてあるだけなので、どうやら中身はこれからのようだ。
が、これは、じつは重要なテーマだ。21世紀の世界を左右するテーマと言ってもおかしくない。
なぜかというと、事業承継問題や環境問題、貧富の格差問題等は、すべて行き過ぎた資本主義の歪みから生じている問題であり、その解決無くして完治することはないからだ。当機構が事業承継問題解決のために唱えている「倭の国の資本主義」や、環境問題解決のために巷で言われている「公益資本主義」も、根本は同じ方向で、資本主義の歪みの解決を目指している。願わくば「新しい資本主義」も、同じ方向で、実効性を伴う活動になることを願う(くれぐれも、政治利用のためのお題目で終わらないことを願っている)。
問題は、具体論だ。資本主義に歪みが生じていることに、異論を唱える方は少ないだろう。だが、資本主義はすでにデファクトとなって世界経済の要所を抑えている。膨大な既得権益者層もいる。このデファクトを変えるには、断固たる決意と、膨大なエネルギーが必要だ。だが、心理学に有名な言葉がある。「人は変わるくらいなら自殺する」ということだ。
また、宇宙物理学では、下記の現実がわかっている。「重力は強大だ。だから、ロケットが重力を抜け出すために最初の10秒で使うエネルギーは、その後10年間ロケットが宇宙を飛び続けるエネルギーよりずっと大きい」ということだ。本気で資本主義を変えようとするなら、まず「人の本能」を「意志の力」で乗り越える必要がある。既得権益者層だけでなく、被害者層も含めて、諦めや批判という「人の本能」を乗り越えることだ。そのためには、断固たる決意が必要になる。
また、その意志の力を、デファクトという重力から完全に逃れて目標を達成するまでの長期間にわたって、発揮し続けなければならない(花火のように一瞬燃えるだけでは、目標は達成できない)。それは、時速4万キロ超の速度でロケットが飛びたつのと同じくらいのエネルギーを、目標を達成するまでの数年間、時には数十年間、放ち続ける必要があるということだ。これをするには、一私人を超えた「使命感」が必要になる。この両立は、とても難しい。まして、それを金儲けやIPOのためにやるのではなく、世のため人のために(=ソーシャル)な視線で行うのであれば、なおさらだ。周りの人が誰も行動せず、多くの人が惰性と諦めで行動しない中で、最初に変化を起こす人になるというのは、それだけでもはや奇跡に近いことだ。「人の本能」という強大な重力から抜け出ること、毎日ロケットを宇宙に打ち上げ続けるくらいの膨大なエネルギーを長期間保ち続けること、さらに先例がなく方法すら未知な中で進むということ、そのすべてを成し遂げていくことが困難なことは、子供にだってわかる大変なことだからだ。
多くの人は、ラクをして生きていきたい。進んで苦労を買って出る人は、ほんのごく少数だ。だが、それでも、やらなければならないことはある。そして、やらなければならないことは、誰かがやらなければならない。だから、我々は、自ら動くことにした。そして、我々の活動を見て、自ら動ける方から、ご参加頂ければと思って活動をしてきた。最近、徐々にご参加頂ける方が増えてきて、大変嬉しく思っている。上記の困難さを乗り越えて、初期のファーストムーバーとして当機構の活動にご参加頂いている方々に、この場を借りて心から感謝申し上げたい。
この点は、ケネディが、よい先例を示してくれている。ケネディが「10年以内に月に行く」と決めたムーンショットビジョンがあったから、人は月に行けるようになった、ということだ(決して、日々「金儲け」をし続けたから行けたのではない)。当時も、荒唐無稽と笑う人や、無理だ、不可能だ、何の利益にもならない、などと批判する人は多かったそうだ(人の本質はそう簡単に変わらないものだ)。だが、ケネディは断固たる決意を示して、目標を設定した。そして、ごく一部の賛同する人、数人がまず動いた。すると、その次に賛同する人が、数人また現れた。その流れは、最初は小さかった。だが、とどまることなく続き、あたかも小さな水滴が集まって小川になり、小川が集まって大河になり、やがて大海に届くように、大きな力になった。最終的に人は月に行けるようになり、目標は達成された(いまや、民間の宇宙旅行が一般的になろうとしている!)。
当機構の挑戦も、同じことだ。事業承継問題の全面的解決は、月に行くより難しい挑戦かもしれない。機能不全を起こして歪みを生じさせている資本主義(や民主主義)の改革をする必要もあるからだ。だが、日本人にとっては、月に行くよりも重要だろう。なぜなら、我々の子や孫の生活、命にかかわる問題だからだ。だから、当機構は事業承継問題の全面的解決を目指して、3年前に断固たる決意をして出発した。ケネディの例にもれず、多くの方から、「そんなの無理だ」「できっこない」「辞めておいた方がいい」「君が(私が)そんな苦労する必要ないじゃないか」という声も頂いた。が、同時に、「素晴らしい取り組みだ」「私も参加したい」「当社も協力する」という方も、ごく少数ながらいた。我々は断固たる決意をもって前者の言葉を聞き流し、後者の言葉に感謝して、「夢は大空に、努力は足元に」を旨に、日々行動を積み重ねてきた。そして、活動4期目に入ったこの10月、当機構には20名を超える仲間が集っている。事業承継問題を解決するための1号ファンドにも、既に数十名の支援者の方々が、数千万円の資金を投じてくれている。これは、ビジネスの世界から見れば小さな1歩だが、事業承継問題の全面解決に向けては大きな1歩だ。3年かけて準備してきた、大きな問題を解決するための大きな仕組みが、ようやく音を立てて動き出した。この流れは、いつか小川になり、大河になり、そして大海になるだろう。動けない人が悪いのではない(普通の人は、普通はまだ動けない)。ただ、いま早く動ける人がすごい人、なだけだ。動ける人から、動いていこう。そして、先に動ける人は、後からなら動ける人のために、道を示していこう。全ては子や孫に、未来を残すために。

