さて、前回の続きになるが、
今回は「2.本当の直接金融とは?」について話そう。
そもそも「直接金融」とは何か?
Googleで調べてみると、各社によって定義が異なって興味深い。
まず、広辞苑では下記のように定義されている。
「資金需要者である企業などが、株式や債券などの発行によって、
金融機関を通さず、個人その他から直接に資金を調達すること」
(↔間接金融)
(ちょくせつ‐きんゆう【直接金融】 – 広辞苑無料検索 (sakura-paris.org)より引用)
いわゆる、教科書的な定義だろう。
だが、ここに落とし穴がある。
現実に、皆さんが株や債券を買うときには、どこで買う?
普通は、証券会社で買うだろう。
なぜか?
法規制等により、他の場所では買えないからだ。
にもかかわらず、
ここで面白いのは、「金融機関を通さず」と定義されているところだ。
一般常識では、「金融機関」とは、銀行や証券会社を指す。
実際、同じ広辞苑でも、「金融機関」とは下記の通り定義されている。
「資金の造出・融通・供給およびその仲介を行う機関。
銀行・証券会社・信託会社・保険会社・信用金庫・農業協同組合・質屋の類」
(質屋が金融機関というのは想定外だったが。。。)
「仲介を行う証券会社」も、当然に金融機関だ。
ところが、
「直接金融」における「金融機関」の定義としては、
「金融機関を通さず」となっており、
その資金の仲介実務を担っている証券会社は、
「金融機関」とはされていないのだ。
どういうことか?
ここで、他のHPを調べてみよう。
たとえば、野村証券のHPだと、
「直接金融」とは、下記のように説明されている。
「直接金融(ちょくせつきんゆう)分類:金融
直接金融とは、「お金を借りたい人」と「お金を貸したい人」の間に、
第三者が存在しない取引のことである。
企業が株式や債券などを発行して、投資家から資金を直接調達する証券取引などをいう。
資金は投資家から企業に移転され、投資先のリスクは資金を出す投資家が負うことになる。
一方、銀行から融資を受けて資金調達する取引などを間接金融という。」
(直接金融|証券用語解説集|野村證券 (nomura.co.jp)より引用)
これも正しいのだが、わかりにくい。
どこが?
「第三者が存在しない取引」という点だ。
先にも述べたように、
皆さんが株や債券を買うとき、普通は証券会社に行く。
つまり、「直接金融」の取引は、
通常は下記のように行われ、お金も下記のように流れる。
「発行企業 ⇔ 証券会社 ⇔ 投資家」
これは、一般常識的に言うと、
「第三者(証券会社)が存在している」
と言うのではないかと思うが、
読者の皆様にとってはいかがだろう?
そして、この質問の解が、今回の解のヒントである。
結論を言おう。
「直接金融」と「間接金融」の違いは、
「資金の流れ」や「取引の流れ」の話ではないということだ。
直接、間接とは、「リスクとリターン」の話なのだ。
(そのようにズバリと書いてあるHPは、見つからなかったが。。。)
「間接金融」の代表格である銀行の融資取引では、
リターンである融資金利の大半は、銀行の経費等に充当される。
その代わりに、万一貸し倒れが起きたとしても、
預金者のリスクには直結しない。
他方、「直接金融」の代表格である株や債券では、
投資家はリターンをほぼ丸ごと得られる。
代わりに、万一貸し倒れが起きたら、ゼロになるリスクも背負っている。
間接、直接とは、
この「リスクとリターン」の関係を指している。
「間に金融機関や第三者がいない」という、
形の問題ではないのだ。
この点を、教科書等において誤認させている点には、
根本的な問題があるだろう。
(意図的にか否かは不明だが。
本指摘に基づき、各定義が修正されることを期待している)
そして、本日の質問の解は、このさらに1歩先にある。
「本当の直接金融」とは、下記のようにお金が流れることだ。
「発行企業 ⇔ 投資家」
これは、わかりやすいだろう?
そして、各社の定義の通りでもある。
そして、これが「さわかみ投信」や「セゾン投信」が、
「直販」にこだわる理由なのだ。
間に第三者の会社が入れば入るほど、
発行企業と投資家の距離は離れていく。
(当然、コストもかかる。
発行企業の調達コストは上がり、投資家のリターンは落ちやすくなる)
逆に近ければ近いほど、
発行企業と投資家の距離は近くなる。
(当然、コストも下がる。
発行企業の調達コストは下がり、投資家のリターンを上げやすくなる)
現代日本では、法規制等の事情から、
「本当の直接金融」は、
小規模企業のごく少額のファイナンスを除くと、
合法的には不可能だ。
まして、上場企業を投資対象にして、
多くの個人のお金を扱う投信会社では、
なおさらだ。
だが、発行企業と投資家の距離が近ければ近いほど、
「本当の直接金融」に近くなる。
その中で、仲介の第三者を極限まで除いた形で運営されているのが、
直販を主体とする「さわかみ投信」であり「セゾン投信」である。
そういう意味では、
両社は「本当の直接金融」に、
実現可能な範囲で最も近い理想的な形で、
金融事業を行っていると言える。
(投資事業とは、本質的に金融事業だ)
Yamatoさわかみ事業承継機構も、
今後両社と同様に、直販での直接金融を主体に、
事業承継を推進していく。
ここで1つ、当機構ならではの、出来ることがある。
Yamatoさわかみ事業承継機構の承継対象は、未上場企業だ。
だから、上場企業を対象にする両社以上に、出来る直接金融があるのだ。
どういうことか?
たとえば、
ある地域にA社という未上場企業があり、
事業承継問題を抱えているとしよう。
そのA社の社名を公表したうえで、
その地域の方限定で、
会社を残すのに必要な資金を募るのだ。
そうすると、何が起こるか?
地域の方は、その会社の顧客(あるいは消費者)でもある。
つまり、「顧客が、A社の価値や存否を決める」という、
「本当の直接金融」を実現出来るのだ。
企業は本質的に、顧客のニーズを満たすために存在する。
その企業と顧客が「本当の直接金融」を通じて、
いまよりもずっと近づくことが出来れば、
資本主義は大きく進化するだろう。
それは、事業リスクを負わずに、
一時的な手数料を得るだけの仲介業者が行う
ネット上のクラウドファンディングとか、
出来るだけ多くのフィーを取ることを目的とした
「アセットギャザリング運用業者(≒大半の運用業者)とは、
まったく別次元の金融を提供することになる。
発行企業と、生活者投資家(投資家であり、顧客でもある人)を、
直接結びつけることが出来るようになるのだ。
現実世界には、法規制の他にもさまざまな障害があり、
このような挑戦をするには、まだまだ多くの壁を乗り越える必要がある。
また、その準備が出来たとしても、挑戦の壁は非常に高いため、
実現出来る企業はごく少数だろう。
だが、1社でも出来れば、
それは新しい形の「本当の直接金融」を世の中に提供することになる。
その時、
今の行き過ぎた「間接」資本主義の流れに、
また1つ新しい解が生まれることになるかもしれない。
当機構は、「本当の直接金融」の提供や、
そのさらに先にある「資本主義の進化への貢献」も視野に入れながら、
事業承継問題の全面解決に取り組んでいきたいと思っている。