今回は「長寿化と事業承継」について、書いておきたい。ここは、特にシニアの方に誤解が多いので、ぜひよく理解して頂きたいところだ。
セミナー会場などで、特にシニアの方から、「事業承継なんて、自分の死後のことだから関係ないよね?」という質問を受けることがある。よくある勘違いだが、現実には、事業承継問題はシニアにも関係大ありなのだ。事業承継問題の最大のステイクホルダーは子や孫だが、その次はシニアだ。その位、関係は深く、影響は大きいのだ。
なぜか。理由は2つある。
長寿化と、収入源だ。
まず長寿化について説明していこう。
今週の日経新聞にも載っていたが、「死亡年齢最頻値」という言葉をご存じだろうか?簡単に言うと、「最も死亡者数が多い年齢」のことだ。現在は、女性で92歳、男性で88歳となっている。
この数字を現実に置き換えると、多くのシニアは、60歳で定年を迎えた後に、男性は28年、女性は32年も人生があるということだ。(事実、90歳時生存時割合は、男性で3割、女性で5割だ)。換言すると、男性も女性も、60歳の定年時には、人生は2/3しか過ぎておらず、あと1/3も残っているということだ。
では、人生の1/3とは、どの程度の時間だろう?最後の1/3がわかりにくければ、最初の1/3を思い出してみたらいい。
0歳でおぎゃーとこの世に生まれ、親の愛情を受けて育つ幼少期。学校に通い、学び、部活やクラブ活動等に打込む学生時代。さらに、就職活動を経て会社に入る新人時代を経て、会社で10年弱の時間を過ごし、そろそろ中堅社員になってくるくらいの時間だ。人によっては結婚し、家庭を設け、運よく子宝に恵まれる人もいるだろう。
その30年と同じ長い長い、これまでの人生の半分に相当するくらいの時間が、あと1周分、多くの60歳の方には残されているのだ。
しかも、医療や技術の進歩により、寿命は年々伸びている。今後も寿命は伸び続けるだろうから、現在30年の余生は、その30年を経過する間に、35年、40年と伸びていく。現在の死亡年齢最頻値が90歳前後なら、今から30年後の2052年の死亡年齢最頻値は100歳前後になるだろう。ということは、今60歳の方の多くは、40年近い時間を持つことになる。(それは、もはや「余生」というには長すぎる時間だ)
他方、事業承継問題の大半は、今から20年の間に起こる。もし、その20年間に事業承継問題を解決し、雇用・経済・安全を残すことが出来なければ、どうなるか?40年の寿命を持つシニアの方々も、特にその後半の20年で、顕著に事業承継問題の影響を受けることになる。
ここで2つ目の問題がある。収入だ。事業承継問題の影響は、現役世代よりも、シニアの方の方が深刻になる。なぜかというと、多くのシニアの方は、収入が年金等に限られるからだ。
事業承継問題は、国の財政にも大きな影響を与える。雇用がなくなり、税収がなくなる。同時に失業給付が増え、シニアには年金が増える。さらに失業でやりがいを失えば、多くの場合医療費も増える。それは、ただでさえ史上最悪の状態にあると言われている日本の財政を、より大きく傷つけてしまう。
その結果、どうなるか?国家の財政が次の40年間もこれまで通りを保てれば、シニアの方は影響を受けない可能性はある。が、それがいつまで持つかは、誰にもわからない。(明日破綻してもおかしくないという意見や、今なぜ保てているのか不思議という識者も、年々増えてきている)もうすでに、歴史上異常なレベルまで膨れ上がった日本の財政は、その位、いつ危機に陥っても不思議ではない状態になっている。
その危機が現実になったとき、何が起こるか?ひどいインフレや、大量の失業、そして「年金カット」が発生するだろう。当然、現役もシニアも、子や孫も、日本に住む全員が、大きな被害を受けることになる。
だが、現役世代以下は、労働力として日々働いて収入を得ているため、回復が早い。労働力無くして、経済は動かないからだ。
他方、年金頼みのシニアは、国の財政が破綻して、年金がカットされたら、収入がなくなる。ここで問題になるのが、「年金制度」をどの程度維持できるか、だ。生活できなくなるまでは行かないことを願ってるが、危機が起こって国の財政が破綻すれば、もはや国も大盤振る舞いは出来なくなる。大盤振る舞いが出来なくなる以上、今よりも不便な暮らしを強いられることになるのは間違いない。だが、その時点で年金生活をしてきたシニアに、そこから労働力として働けというのも、多くの場合は難しい話だろう。
その結果、シニアは現役以上に、深刻な影響を受けることになる。
ちなみに、この年金(や国民皆保険制度)の維持のために土台として大きく貢献しているのが、雇用でも税収でも過半を占める中小企業だ。
その中小企業が廃業するのを放置しておけば、当然にこれらの制度も持たなくなる。土台である石垣が崩壊すれば、当然に天守閣も崩壊するのだ。(だが、逆にいまからの20年間で石垣を守れば、その後も天守閣を守れる可能性は、まだ残っている。)
では、どんな対策があるのか?
シニアの方々自身に、いったい何が出来るのか?
我々は、2つの方法を提供している。
1つは、「シニアになっても働き続ける事」だ。当機構は、当機構内や承継先の中小企業において、「生涯現役で活躍しよう」というプログラムの提供を通じ、働ける場を主にシニアや女性に提供している。それは、シニア個人にとって、これまで培ってきた知見を活かした社会貢献になるし、やりがい・生きがいにも、個人の収入確保にもなる。国の財政に対しても、国民の三割に迫ろうという大量の年金受給者が納税者に転じて、かつ遣り甲斐を持って元気に働くことで医療費の削減にもつながれば、それは一石三鳥以上の効果を生むだろう。
ただし、「働くなら本気で」が条件だ。腰掛のつもりなら、最初からご遠慮いただきたい。それは、事業承継問題の解決に資するどころか、逆に邪魔になるからだ。やるなら本気で、最低でも10年は何があってもやり遂げる覚悟を決めて、参加してほしい。
事業承継問題を解決することは、そんなに簡単なものではない。が、それでも立ち向かい、やり遂げる人がいなければ、子や孫の未来は救えないのだ。我々は、そんな素晴らしいシニアの方々との出会いを、心か楽しみにしている。
2つめは、「資産運用しながら、事業承継問題の解決に貢献する」ことだ。自ら働くことが諸事情で難しい方でも、こちらの方法なら参加しやすいだろう。詳しくは当機構HPの通り(https://jigyosyokei.co.jp/business/investors/)だが、1口100万円からの資産運用をしながら、事業承継問題の全面的解決を応援する方法だ。
我々は、事業承継問題の解決を図りながら、同時に日本の眠れる宝である(そして、その過半はシニアが保有している)「預貯金の山」がリターンを生むようにしたいと考えている。これは、岸田首相が最近唱え出した「日本の資産所得を倍増する」でもあるし、ESGやSDGs、インパクト投資といった概念にも当てはまるだろう。(もし「雇用・経済・安全を子や孫のために残す」というコンセプトがESGやSDGs、インパクト投資に当てはまらないのなら、これらのコンセプトにはいったいどんな意義があるのだろうか?)
シニアの皆さん、ご理解頂けたでしょうか?
事業承継問題は遠い未来の「他人事」ではないのです。
ご自身の人生にも生活にも、大きく関わる「自分事」なのです。
ご理解頂けた方は、次は「自ら何をするか?」です。
ぜひ、動ける方から、行動に移して頂ければと思います。
(善は急げ、です)
すべては子や孫に、未来を残すために。
MESSAGE