ありがたいことに、毎日とても忙しい。
創業者の方と会い、支援者の方と会い、
そして承継者の方と会う。
日々何件もの面談で、予定がいっぱいだ。
当機構の「5000社の事業承継」という目標と比べれば、
まだまだ数%にも満たない段階ではあるが、
それでも1年前には誰も知らず、考えもしなかったことが、
当機構の活動を通じて、少しずつ世の中に認知されてきたのを実感し、うれしく思う。
ただ、当機構の活動を勘違いしている人や、
理解できていない人もまだまだ多い。
そこで今日は、当機構が取り組んでいる「承継」と、
多くの他社が取り組んでいる「買収」の、
違いについてまとめておこう。
「買収」と「承継」の違いは、何だろうか?
「買収」とは、広辞苑によると、以下のように定義されている。
①かいとること。買い占めること。「土地を―する」
②ひそかに利益を与えて味方に引き入れること。「人を―する」「―供応」
②の定義は、言い得て妙を得ている。
そう、「買収」とは、利益目的で行われる行為なのだ。
他方、「承継」とは、こう定義されている。
①うけつぐこと。継承。
②〔法〕権利または義務をそのまま引き継ぐこと
そう、承継とは、そのまま引き継ぐことなのだ。
ここまでくれば、もうおわかりだろうか?
世の中に、「事業承継に取り組んでいます」という会社は山ほどあるが、
その9割以上が取り組んでいるのはそのまま引き継ぐ「承継」ではなく、
利益目的の「買収」なのだ。
多くのファンドがよくやるように、
買った後に「ハンズオン」や「効率化」という美辞麗句の元で変化を加える
(自分の利益目的で、会社を「解体」したり、「リストラ」したり、最後には「転売」したりする)
ことは、そのまま引き継ぐ、ということではない。
つまり、「承継」とは言えない。
日本語の使い方として、誤っているのだ。
ただ、こういう会社にいて稼いでいる人たちには、賢い人が多い。
彼らもわかっていないわけじゃない。
「ファンドとして買収します」とか、
「M&A仲介会社として、買収支援します」という、
正確な日本語を使うと、とてもイメージが悪い。
それは自らの利益にならないから、
「承継」という方便を使っているケースが大半なのだろう。
よくわからない?
なら、上場企業の平均年収ランキングを調べてみたらいい。
M&A仲介会社とファンドが、ランキング上位を独占している。
「利益」を目的にやっているから、上位になるのだ。
ここでは、ファンドや仲介会社を非難するつもりもない。
別に、自らの利益を貪欲に追い求めることが、
違法なわけではない(少なくとも、いまのところは)。
ここで問題なのは、
「資本主義の神の手は、強欲だが短い」ということだ。
資本主義の神の手は、
利益になるなら何でも強欲にやるが、
利益にならないことは何もしない、のだ。
これを事業承継問題に当てはめるとどうなるか?
利益目的で取り組むファンドが「買収」できる企業は、全企業の上位1%にも満たない。
ファンドは皆、本音では、投資した後に上場して大もうけにつながるような、
全企業の上位0.1%になれる企業を狙っているのだ。
(新聞によると、そんなファンドにとって大もうけになる企業が、近々また1社上場するようだ)
同様に、利益目的で取り組む仲介会社が買収の仲介を出来る企業は、
全企業の3%にも満たない。
では、残る97%はどうなるのか?
答えはカンタン。
放置されるのだ。
事業承継問題は、資本主義の神の手が、届かない領域の問題なのだ。
だから、買収ファンドが日本に現れて30年以上が経過し、
買収の仲介会社が雨後の筍のように設立(うち4社は上場している)されても、
そしてこれらの会社がどれほど稼いで繁盛しても、
日本の事業承継問題はずっと放置され続けてきて、今も残っているのだ。
だから、当機構は、残る97%を対象に、
本当の事業「承継」に取り組むことにしたのだ。
資本主義の神の手がとどく事象と言うのは、
実のところ世界の全事象の4割くらいだろう。
半分以上は、資本主義の神の手に任せるだけでは、解決できないのだ。
(同じことは、環境問題にも、貧富の差の問題等にも言える)
じゃあどうするのか?
我々は、こう考えて、取り組んでいる。
「神の手が届かないなら、我々の手で届けてやろう。」
「神の力が及ばないなら、我々の力でやろう。」
唯一無二だが、多くの欠陥を抱える資本主義の補完。
それが、当機構の挑戦に含まれる、もう一つの意味なのだ。