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商工中金との共同ファンドの設立について

当機構と株式会社商工組合中央金庫(以下、商工中金)は、共同出資により中小企業の事業承継問題を解決する「つながる未来ファンド」を設立し、1月末にプレスリリースを行いました。今回は、その目的について、ご説明したいと思います。

まず、プレスリリースの概要は、以下の通りです(当機構のHPに全文を掲載しております)

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株式会社事業承継機構(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:吉川 明)は、株式会社商工組合中央金庫(本社:東京都中央区、代表取締役社長 関根 正裕、以下、商工中金)との共同出資により、「つながる未来ファンド」(総額31.5億円:うち商工中金30億円、当機構1.5億円)を設立しました。本ファンドによる承継企業の株式永久保有や、経営および経営改善支援を通じて、中小企業の事業承継問題の解決に貢献してまいります。

当機構は、社会に必要なすべての中小企業を主役として残すことを目指し、中小企業の雇用・経済・安全を子や孫に残すことを目的に、事業承継問題を全面的に解決するため、「利益」と「社会課題の解決」を両立するソーシャルビジネスを展開しています。

中小企業経営者の高齢化が進む中、事業承継問題の解決は、喫緊の社会課題となっています。当機構は、後継者不在を含む事業承継における様々な課題を抱える中小企業に対し、課題をパターン化し、この解決策をパッケージで提供する独自の仕組み「事業承継プラットフォーム®」を構築することで、創業者等が保有する株式について永久保有することを前提とした事業投資から承継先の経営まで一貫した支援を行っています。商工中金は、中期経営計画(2022~2024年度)において、投資業務を含む高度金融サービスのシフトを掲げ、変化し続ける社会課題に積極的にチャレンジしています。

そのような中、商工中金と当機構は、事業承継問題の解決をさらに推し進めるべく、共同での本ファンド設立にいたりました。今後、両社は本ファンドを通じて、人的交流も含め連携して中小企業の事業承継問題解決に取り組んでいくことで、お客さまの持続的な企業価値向上に貢献してまいります。」

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本ファンドの設立は、当機構が目指す「事業承継問題の全面的解決」という目的と、商工中金が目指す「高度金融サービス」という目的が高度なレベルで合致し、日本全国の中小企業に広く事業承継問題の新たな解決策を提供することを目的としたものだ。そのため、いわゆる一般的な銀行系ファンドの設立とは、大きく異なる点がいくつもある。その中から、特に特徴的なものを3つご紹介しておきたいと思う。

1.永久保有が前提であること

当機構のビジネスモデルの一番の特徴が、永久保有を前提としていることである。当然、今回設立した商工中金との「つながる未来ファンド」においても、その前提は変わらない。永久保有の仕組の上に、当機構は「転売なし、統合なし、移転なしでの中小企業の事業継続」を目指して、対象企業を半永久的に共同経営し、全面的に支えていくサービスを提供している。

他方、一般的な銀行系ファンドは、いわゆるプライベートエクイティファンドと同様に、3~5年での転売が前提となっている。つまり、「事業承継問題を解決します」と言っても、銀行が主体的に経営を引き受ける期間はわずか3~5年に過ぎず、その後は第三者に転売することが大前提となっているのだ。

その違いは、具体的にはどこにあるのか?わかりやすくするために、たとえば向こう50年間、対象企業が存続する例で考えてみよう。当機構の場合には、1度承継したら転売しないので、50年後も当機構が株主のままだ。転売する必要がないから、長期の経営を犠牲にして短期の利益を絞り出す必要もない。だから経営陣も、安心して長期的な目線で経営が出来る。長期的な目線で経営をすれば、人材や設備は最重要な要素であることは自明の理であるため、当然に人材や設備への投資も惜しむことはない。結果、自然と長期的に良い企業が出来、競争に勝ち残っていける確率が高くなる。当機構は、永久保有を提供することで、長期的な経営を行える環境を提供しているのだ。そして、それは過去に創業者が長年提供してきたのと、同じ環境を提供することでもある。

他方、ファンドの場合には、3~5年ごとの転売が大前提だ。5年毎にファンドが転売するとしたら、50年間では10回もファンド間で転売されることになる。その経営への影響はいかなるものか?想像に難くないだろう。オーナーが変われば、経営方針は変わる。5年ごとに10回もオーナーが変わり、社長も代わり、経営方針も変わったら、従業員や取引先はたまったものではないだろう。また、ファンドとしては、転売する5年以内という短期間で、最大限の利益を上げなければならない。だから、成果が出るのに5年以上かかるような長期の人材投資や設備投資は、たとえ長期的に重要であっても後回しになる。経営陣も、短期間で成果を出す必要があるから、長期投資を出来る環境にない(仮に長期投資の重要性に気付いていても、そうしなければクビになるからだ)

このような短期利益最大化・長期利益無視の経営を50年も続けていったら、中小企業はどうなるか?50年後には、長期間投資されなかった人材も設備も、ぼろぼろになってしまう(それでも生き残る、本質的にとても強い企業もあるだろう。が、その企業を当機構が承継していたら、きっとより強くなれたはずだ。本来あるべきだった従業員への分配や、企業が社会に提供出来た新製品・サービスを犠牲にしていることに、変わりはない)

本質的に、転売を前提とするのと、永久保有を前提にするのでは、経営環境がまったく異なるのだ。承継社長の立場から言えば、正反対の経営環境に置かれると言ってもいい。どちらの企業が50年後に生き残りやすいかは、自明の理だろう?

2.全国の中小企業を対象にしていること

2つ目の特徴は、全国の中小企業を対象にしていることだ。これは、金融機関の事情に詳しくない方にはわかりにくいかもしれないので、説明が必要だろう。まず、中小企業のメインバンクは、全国展開しているメガバンクではないことがほとんどだ。中小企業のメインバンクは、地域限定で営業を行っていることが大半の地方銀行や信用金庫といった地域金融機関なのだ。

そして、これらの地域金融機関は、「地域のために地域の金融を担う」という使命を有している。裏を返せば、地域外に出ていって活動することは少なく、またそれは原則として制限されている(ビジネスが多い都心部に出ていく地元企業を応援するために都心部に支店を有することはあるが、それが例外的に許容されている程度だ)。結果、多くの地方銀行系ファンドの投資可能なエリアは、地元(+せいぜい都心部)に留まっている。

その点、今回の「つながる未来ファンド」は、日本全国どこの企業であっても対象とすることが出来る。なぜなら、商工中金は日本全国を対象エリアとして営業を行っているからだ。全国の中小企業を対象にした金融機関という商工中金ならではの特徴は、当機構が目指す「事業承継問題の全面的解決」のために、そしてその先にある多くの中小企業のために、今後大きな価値を持つことになると確信している。


3.各地域金融機関と協力して、事業承継問題の解決策を全国の中小企業に届けていくためのものであること

3つ目が、商工中金が政府系の公的金融機関であるということだ。日本には2023年1月末現在で99の地方銀行があり、平均すると47都道府県に2行以上の地方銀行がある。ただ、残念なことに、同都道府県内にある2行は熾烈な競争関係にあることが多く、仲が良いことは稀だ。その地域金融機関間の関係は、当機構が多くの中小企業に解決策を提供するための課題となっていた。

その点、商工中金は政府系であり、公的金融機関であるため、多くの地方銀行と連携しながらもどこかの色に染まるということはない。また、公的金融機関であるからこそ、自らだけの利益を求めるのではなく、「全国の地域金融機関や中小企業に高度な問題解決方法を提供していくために、先導的な役割を果たす」という役割があり、またその矜持を持って活動されている。実際、これまでに共同してきた過程で商工中金の方々と日々触れ合う中で、その大義や公的マインド、そして行動レベルの高さに直に触れ、感動することも多かった。その本気の公的マインドが、単なるカネ儲け目的のビジネスを超えて「事業承継問題の全面的解決」を本気で目指している当機構の価値観と、高いレベルで合致した。方向性や価値観の根本的な一致を感じられたからこそ、当機構は商工中金との連携を深める決断を行い、今回のファンド設立に至った。

当機構と商工中金の連携は、地域金融機関の脅威になることではない。逆に、地域金融機関にとって、地元の中小企業の事業承継問題を解決しながら、大きなビジネスにして頂く機会になると確信している。なぜなら、この連携は、全国各地で事業承継問題を抱えて悩んでいる中小企業の方々に(そして中小企業を顧客として抱える各地域金融機関に)、その解決策を広く提供していくための連携だからだ。当機構にとっては今後のフィールドが大きく広がることであり、社員一同ますます頑張っていこうと思っている。

全ては子や孫に、未来を残すために。

 

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