Profile
大阪生まれ大阪育ち。京都大学法学部を卒業後、ニチメン株式会社(現 双日株式会社)に入社し、30年以上にわたり機械部門でモノづくりに携わる。2015年に同社執行役員兼関連会社代表取締役、2017年にRIZAPグループ株式会社執行役員兼関連会社社長に就任。2021年から物流会社上席常務執行役員を経て、2024年8月に明工の代表取締役に就任。
座右の銘は、「一生懸命、Bloom where you are planted (置かれた場所で咲きなさい)」
Introduction
株式会社明工は1969年の創業以来、「品質を第一とし、真心と誠意を込めた価値ある製品をお客様に提供させていただくことにより、広く社会に貢献する」をミッションに、建築金物、サッシ金物、内装建材、アルミ形材加工品の製造販売を行っています。2024年9月に当機構が「事業承継プラットフォーム®」を活用し、事業を承継しました。
今回は、代表取締役の平川さんにお話を伺いました。
▶明工の代表取締役就任を決めた理由を教えてください
株式会社事業承継機構(以下、JSK)を知ったきっかけは、JSKのグループ会社で働いていた知り合いの紹介で吉川さんにお会いしたことです。商社時代にM&Aも何件か経験しましたが、ファンドは基本的に企業を高く売却することを目的としているので、利益最大化のためにリストラしたり、設備投資を抑制したりしていました。そのやり方は違うなと思っていましたので、吉川さんと出会い、これまでのファンドとは全く異なる永久保有で事業承継するというJSKに魅力を感じましたし、私の得意分野であるモノづくりの会社で、私の人生最後の貢献として社長として従業員を幸せにすることに挑戦しようと思いました。
▶代表取締役として大切にしているビジョンや理念を教えてください
最も大切なステークホルダーは「従業員とその家族」。次に「顧客と取引先」、三番目が「地域社会」、最後に「株主」だと考えています。「従業員の成長と幸せが会社の成長につながる」と信じていますので、従業員一人ひとりの能力を最大限引き出し、全員が100%の力を発揮できる組織を目指しています。
▶その理念のもと社長就任から1年経ちましたが、この1年をどう評価されますか?
まさに、この1年は当社にとっては「江戸幕府から明治維新」に突然移行したような大変革の年でした。
経営の基本方針 として「従業員第一主義」 と「透明性の高い経営」 を掲げてきましたので、200人近い従業員全員と1対1で面談を進めています。その一方で、給与のベースアップや、定年を60歳から65歳に延長するといった待遇の改善を行い、勤務時間の短縮や休暇制度の見直しなど、働きやすい環境づくりを進めました。従業員同士のコミュニケーションを図るために、紙媒体の社内報『絆』も第1号を刊行しました。
同時に、会社の経営情報(売上・利益など)のほぼ全てを従業員に共有し、給与・評価制度についてもオープンにすることで、不公平感を排除するよう努めました。さらに、新しい機械など設備投資も積極的に行いました。
これらの改革の結果、退職率は14.8%から3.8%へと大幅に下がりました。もちろん目指しているのは0%ですが。承継前の2024年と今年2025年に外部の従業員アンケート調査を実施しているのですが、その結果を経営に反映させています。
▶アンケート調査を毎年実施されているとのことですが、結果はいかがでしたか?
2024年7月(回答率97%)と今年2025年8月(回答率96%)に実施しています。その結果によって算定される従業員の総合的な「幸せ指数」は、1ポイント以上の変動が非常に稀である中で、対前年比5.5ポイント上昇しました。調査項目全てのカテゴリーで上昇しているのですが、特に、「上司との関係」「職場の活気と居心地感」「仕事のやりがい」「組織の成長」「人事制度福利厚生」が向上しました。この調査はこれからも毎年継続していきます。経営に対する通信簿のようなものですから。
このように、社長就任1年目は社員のモチベーションを上げることに注力してきましたので、2年目は業績向上に注力していこうと考えています。
▶明工の主要商品や技術など特徴や強みを教えてください
売上の9割が大手住宅機器メーカーで、安定した受注基盤を持っています。主力技術は「金属プレス加工」と「プラスチック射出成形」で、 アルミやステンレスなどの金属をプレスし、プラスチック部品と組み合わせて製品化しています。5つの工場を持ち、各工場で高い品質管理を実現しています。設計・開発部門には13名が在籍し、特許出願数は約200件と開発力も強みです。
当社は、製造業で重視される「QCD(品質・コスト・納期)」の全てにおいて高水準を維持していると思います。 品質(Q)では、出荷前検査で不良品流出を防止し、全工場の不良発生率は0.1%と極めて低い。コスト(C)においては大手顧客から安定的に受注できる価格競争力があり、 納期(D)の遵守率はほぼ100%で顧客の信頼も厚い。
とはいうものの、現状に満足することなく、QCサークル活動・5S活動で現場主導の品質・KAIZEN活動を推進したり、品質管理部門の新設や外部の専門人財登用で品質管理体制を刷新したり、自社開発商品の提案に挑戦したり、といったことも行っていきます。
▶社長が大切にされている3番目のステークホルダーである地域貢献についてはいかがですか?
従業員を大切にするということ、その家族、ひいてはその地域社会との共生・貢献はとても大事だと思っています。大阪に本社がありますので、地元のお祭りに従業員と一緒に参加したり、警察や消防署との関係構築も積極的に行っています。大阪、富山、岡山、滋賀にある5つの工場や事務所がある地域では周囲のごみ拾いなども行っています。小さなことですが、地域に根差した活動を広げていければと思っています。
▶『100億宣言』をされていますが、今後の明工の方向性を教えてください
「2035年までに売上100億円を達成する」という明確な目標を掲げ、全社で共有しています。「本気でやる」と繰り返し伝えることで、従業員の意識改革とボトムアップ型の提案文化を促進しています。また、これを達成するために「7つ戦略と2つの施策」を掲げています。
7つの戦略とは、①業界トップ3への営業強化②住宅分野以外への参入③自社開発製品の強化④自社ブランド製品(BtoC)の立ち上げ⑤首都圏・海外進出⑥金属加工総合メーカー化⑦M&Aによる技術・販路拡大。2つの施策は、DX(デジタルトランスフォーメーション)・AI・ロボット導入と生産性向上です。
最新技術を積極的に取り入れ、活用し、生産性を改善することで会社の質を変えていきます。会社が持続的に成長していくためにも、従業員の皆さんも待遇改善に甘んじるのではなく、会社の成長に主体的に関わってほしいと思います。これからも会社と従業員が 共に成長し、成果を分かち合う組織を目指していきます。
▶最後に、JSKのソリューション・チームとの協業についてはどう思われますか?
JSKの明工担当の皆さんは非常によくやってくれていて、経営支援は大変助かっています。ただ、JSKもグループ企業が26社まで増えていますので、「個人頼み」からグループとしての「組織的・体系的な支援」へ進化することを強く望んでいます。情報共有・ベンチマーク・研修・現場交流など、グループ全体での横展開や連携強化が、今後の成長と課題解決のカギになると思っています。 すでにグループ企業の社長会や次世代の後継者育成研修など新しい取り組みは始まっていますが、JSKの「事業承継プラットフォーム®」がさらに次のステージへステップアップすることで、グループ全体で強くなっていけると信じています。

▼株式会社明工についてはこちら
http://www.kk-meiko.co.jp//

