Profile
東京農業大学農学部を卒業後、ハウスメーカー、商社、米系オフィス家具メーカー、蘭系ブラインドメーカー、仏系ガラス食器メーカー、米系樹脂ケースメーカーと、グローバルに事業を展開する建設業および製造業で営業、マーケティング、工場運営や経営を行う。JSKの「事業承継プラットフォーム®」に承継先社長として候補登録したのち、2024年4月に同社代表取締役就任。
Introduction
2025年の今年、創業85周年を迎える株式会社フルプラ。プラスチック製油さし「ジェットオイラー」やエンジニアリングプラスチック製「ダイヤポンプ」、噴霧器の「ダイヤスプレー」等を開発から製造・販売まで一貫して行い、グッドデザイン賞を複数にわたり受賞しています。 2024年4月に当機構が創業家の希望に応じて役員を推薦し、事業を承継しました。
同社代表取締役の矢後氏にお話しを伺いました。
▶JSKと出会ったきっかけ、そしてフルプラの代表取締役に就任することを決められた理由を教えてください
フランスの小さな村に本社を置くグローバルなガラス食器メーカーに勤めていた時、事業立て直しのために日本で事業承継を検討したことがあり、当時AGCに勤務されていた方に出会ったのです。その後、その方がJSKで承継先の経営支援の仕事をされていたことがJSKを知ったきっかけです。ちょうどJSKがフルプラを承継して代表取締役を探されている時にその方にまたお会いして、とんとん拍子に話が進みました。本当にご縁があったのだなと思います。
あの時は短期間で決断しなければならなかったのですが、ガラス食器メーカーや樹脂成型製品メーカーでの企業経験が活かせると思い、決心しました。製造業と一言で言っても様々ですが、ガラスも樹脂も材料から型に入れて製造していくところが共通しており、フルプラも原料から成型して製品化していく工程は見ていて飽きないものです。
▶フルプラの会社や特長について教えてください
フルプラは歴史がある会社です。創業は 1940年。東京荒川区でスタートし、浦和市に工場を設立。戦中、戦後を経て1950年に台東区に営業所を設立。1963年には埼玉県指定基準工場認定を受け、そこには礼宮様(現 秋篠宮殿下)がご来訪されました。そして1975年に株式会社フルプラとなりました。
強みは自社で完成品まで一貫して製造しているところです。二代目の古澤社長がアイデアを持ち込み、どんどん開発を進めるスタイルを定着させていきました。ブランディングにも取り組み、自社ブランド「DIA」の開発に伴いダイヤモンド形の会社ロゴも策定し、特許も多数取得しました。製品としては、金物系 では油さし(ジェットオイラー)、農園芸系ではスプレーや噴霧器、ほかには空気入れも依然として好評です。一部の金属パーツ、ゴムパーツを除き、全て自社で設計から成型、組み立てまで行っています。
▶代表取締役として大切にしているビジョンや理念を教えてください
教科書通りに答えると、「豊かで希望の持てる企業づくり=健全な経営・誠実な運営・続ける使命・広げてゆく夢」を目指しています。これは創業者の古澤氏、前社長の二代目古澤氏、そしてJSK吉川社長のポリシーをエッセンスにしています。
日々心がけているのは相手の立場で考えること。仲間や取引先様の立場で考えるように心がけています。社内のヒエラルキーを無くすことを目指して、肩書での呼び合いを廃止したり、社員食堂で社員やパートの皆さんと交流したりするよう努めています。
▶フルプラをとりまく事業環境をどのように捉えていますか?
樹脂成型製造業者は数多く存在していますが、その多くはパーツ製造やOEMなど受注生産です。当社のように材料を仕入れて完成品(製品)の状態まで一貫して”自社ブランド“で製造している企業はそれほど多くありません。また、昨今プラスチックは環境問題など風当たりも強いのですが、当社が製造している製品はいわゆるプラスチックごみの原因とされているレジ袋や飲料用ペットボトルのような消費消耗品ではありません。お客様自身による使い方に多様性があるため、上手に取り扱うことで環境に負荷をかけず利便性を活かせるものだと思います。
▶フルプラが抱えている課題と今後の方向性は?
大きな課題は高齢化です。単に年齢の問題ではなく、生産効率、IT・ハイテク技術への追随や適応へのチャレンジも含む問題だからです。そして何よりもこれから10年、20年と事業を継続して行かなければなりませんので、健全な経営を続けながら組織としての若さを保つ必要があります。 そのために「人財」の採用は重要ですが、若手の採用も大きな課題と捉えています。働き方改革を進め、将来的な機械化を見据えて、魅力のある職場をつくっていきたいと考えています。
▶JSKのソリューションチームと、どのように協働しているのでしょうか? どのような点がうまくいっていますか?
フルプラはその85年の歴史の中で、製品、技術、経験など培われてきたものがたくさんあります。一方で、IT化や現代の社会環境に適応したルール・規則への対応など、まだ足りない部分もあります。これは一朝一夕で対応できるものではありません。社内では対応しにくい、あるいは時間がかかる生産効率の算出や、法令改正に合わせた就業規則改訂、経理財務管理の見直しなどは、JSKの人的リソースをフルに活用して一気に現代的な経営にシフトすることができますので、非常に役に立っています。
最初は社内の反発もあったようですが、JSKとの協働のお蔭で、この1年間で様々なワークスタイルを切り替えることができました。例えば、社員やパートさんが着用するユニフォームもガラっと変えました。黒のポロシャツに赤いロゴが入ったおしゃれなデザインなので、着用したまま通勤してくれて会社のPRにもなっています。また、予算は随分とかかりましたが女性用トイレを全面的に改装したり、熱中症対策の一環として工場内のレイアウトを変えて空調設備を整えたり、働く環境の整備にも取り組みました。
▶どのような企業文化ですか?
とにかく誠実で穏やかな企業文化です。その一方で、物事に非常に柔軟に対応できるしなやかさを持っています。働く仲間たちの前向きな姿勢と気持ちがそうさせていると思います。承継する側と承継される側では180度違うと思うのですが、プレッシャーにさらされている中で非常に頑張っていると思います。従業員の皆さんが協力的だったことにとても感謝しています。これから、さらに風通しの良い企業文化、そして創業者が目指されてきたように、活き活きと働ける環境をつくっていきます。
▶この1年間で様々な改革を進める一方で、良き企業市民として社会貢献にも積極的に取り組まれていますね。どのような社会貢献活動を行っていますか?
本社を東京から埼玉県羽生市に移転したのが2024年です。そこから羽生市民、地域の一員として社会貢献を始めています。以前から行田市にある日本障がい者支援協会 無知無恥(むちむち)さんの内職の業務委託を続けてきましたが、それに加えて社員からの提案で、羽生市社会福祉協議会を通じて生活困窮者への食糧支援、社会福祉法人羽生福祉会の児童福祉施設へのギフト・イベントサポートなども行っています。
▶今年4月には従業員を招待して創業85周年記念レセプションを開催し、皆でお祝いをされたと伺いました。85周年を迎えての想いは? 従業員やその家族、地域社会などステークホルダーに向けてのメッセージをお願いします
85年間も事業を続けてくるのはとても大変なことです。創業時からの経営陣、先人の方々の労苦を活かして、これから新しい歴史を刻んでゆかなければなりません。遠い未来までスプレーを届けましょう。
フルプラで働いてきた方々、そして今働いている仲間とそのご家族が誇れるような企業にしていきます。羽生市内でもどんどん認知を向上させて、市内でフルプラを知らない方がいないくらいにしていきましょう。
そして、取引先様や支援者の方々にも認めていただき、永くながく残ってゆく企業にしたいと思います。85年後は170周年。今年羽生で生まれた子が85歳になっている頃です。気を抜かずに力を合わせて前向きに進みましょう。
▼株式会社フルプラについてはこちら
https://www.furupla.co.jp/