創業者インタビュー

株式会社ふく太郎本部 元 代表取締役 古川 順一 氏

Profile
ふくを得意とする魚屋を営む祖父、伝統的なふくの『2枚引き』の名人で調理師の父と3代にわたりふくに携わる。父の和食調理師専門の人材紹介の会社を任されていたが、1958年に割烹料理店として有限会社ふく太郎本部を設立。1985年に代表取締役に就任。2023年1月に事業承継し、相談役に就任、2024年3月に退任。趣味はかつては色々あったが、7人の孫も大人になった今は園芸。大好きなアマリリスを色々な種類植えて、増やして、楽しんでいる。

Introduction
ふぐの本場とされる山口県下関や福岡県北九州では「ふぐ」を「ふく」と呼びます。株式会社ふく太郎本部は1958年創業、1981年から国内初となるふくの宅配業を開始し、ふくの刺身や加工食品の製造・販売を中心とする企業へ成長。「安心」と「美味しさ」を追求し続けています。2023年に当機構への事業承継を決断され、承継後は相談役を務め、2024年3月に退任された古川氏にお話を伺いました。

▶会社の立ち上げ、歴史を教えてください。社長として、どのような思いで会社を経営されてきましたか

ふくに関わる仕事は自分が始めたというより、親子3代続いてきました。
祖父はふく刺しを得意とした魚屋で、仕出しも行っていました。
父は大きな料亭の料理長を務めながら、和食調理師の人材紹介所を経営していました。
私は父の人材紹介所所長職を受け継いで調理師をまとめつつ、妻が経営する『古川料理店』(福岡県北九州市門司区)を手伝っていました。
妻の実家は父親が料理・寿司店『一休』(山口県下関市)を創業(1958年11月)。跡を継いだ妻の弟夫婦と1981年春頃ふく料理の宅配を計画し、1983年11月には商号を「有限会社ふく太郎本部」と改め、本格的にふく宅配の全国展開を開始しました。

しかし、初期の頃はふくに強い毒があることで警戒されました。商品の管理は保健所の職員が熱心に指導してくれましたが、特殊な商品のため、営業に行っても安全性の説明には大変苦労しました。
また、ふくは当時から高価であったため、仕事は無駄なく、美しく衛生的で美味しい商品づくりを目指しました。

おかげさまで業績は上がっていきました。
2007年には新社屋と工場を北九州市門司区に建設し、同時に㈱消費経済研究所から指導を受けて技術を磨きました。
教育はとても大事で、技術習得のための訓練を従業員全員に行いました。

それからは、水産食品加工施設の「HACCP認定」をふく業界で初めて取得し、北九州市から食品業初の「オンリーワン企業特別賞」も受賞しました。全てふくの技術あってのことです。
常に新しいことに挑戦してきた結果、成果が表れ、評価されていったと思います。すぐにできることではありません。

営業については、始めは「自社受け(DM含む)」「業務用」「市場用」の3つに的を絞って取り組みました。
朝日新聞社から支援をいただいて、ふく料理の通販を始め、郵便局にも協力していただき、ふるさと小包の第1号として表彰もされました。

そういったことをきっかけに、百貨店や料理屋などのお客様から支持を得ることができました。
私の周りにはそれぞれの専門家がいましたので、皆さんにお願いしつつ、私はそれをまとめる役として動いただけです。会社が成長したのも本当に皆さんのおかげです。

▶そこまでに育てた会社を、なぜ事業承継しようと思われたのでしょうか

もうすぐ80歳になるという2020年の冬に決断しました。子ども3人は独立しており、後継者がいなかったのです。
最初は取引銀行5社の支店長と帝国データバンクの担当者に相談しました。飛び込みでやって来たM&A仲介会社に話を聞いたこともありました。

▶当機構JSKを知るきっかけは?

2021年秋、筑邦銀行北九州支店に決算書を持参した際に事業承継の話をしたところ、その年の冬には支店長が吉川社長との面談を設定してくれました。その時の話がとても印象的で、吉川社長からいただいた「事業承継プラットフォーム」という著書も良い勉強になりました。

▶事業承継で重視したことは何ですか。なぜ、JSKに事業承継することに決めたのですか

特に重視したのは、役員・従業員と家族の生活の安定と取引先に迷惑をかけないこと、の2点です。
JSKであれば、M&Aのような転売もなく永久保有ということで、従業員を継続雇用し、取引先も引き継いでいただけると思いました。これからも永く会社を継続していくために経営支援も行っていただけるということにも安心感がありました。

▶事業承継が決まった時のお気持ちは?

契約が成立した時にはまず、多くの関係者に対して「ありがたい」という感謝の気持ちで一杯でした。JSKにも、引き受けていただき「ありがたい」気持ちで感無量でした。

この50年を振り返ると、仕事においては資金面でも体力的にもかなりハードでした。
ですが、営業で全国に行く機会もありましたので、その土地の美味しいお酒も飲めました。楽しまないとやっていけないですから。
そういうことも、最後が良かったからこそ、今こうして言えるのでしょうね。現在の従業員達の姿をみて、事業承継して本当に良かったと思っています。

「安心して引継げた」という代表取締役社長 千葉 忍氏(右)と

▶事業承継の引継ぎはいかがでしたか?

ふくを扱うという特殊な仕事ですので、後任の方は苦労が多いだろうと思っていましたが、新社長は食品業界出身で衛生管理関係にも詳しく、特に指導するところもありませんでした。
従業員とのコミュニケーションや取引先の対応も丁寧で、皆さん安心すると同時に喜んでいました。
尊敬できる素晴らしい方をお迎えでき、これから先の会社と従業員の成長を期待しています。

▶事業承継を考えている創業者の方へメッセージをいただけますか

私の経験から4つのアドバイスをさせていただきます。
① 株所有者である家族の意見を統一させること
② 資産を掌握しておくこと
③ 会社の過去、現在、将来まで説明できるように資料を準備しておくこと
④ 従業員を大事にしてくれる相手(承継先)を選ぶこと

▶JSKへの期待、メッセージをお願いします

JSKが選んだ新社長は経営について全て理解して動いておられるので、何も申し上げることはありません。
期待としては、主要マーケットである東京での営業展開と、製造現場における技術の継承です。
特に人材確保と育成は難しい時代になってきていますが、新しい人材を採用して教育していくことを大事にしていってほしいですね。

▶株式会社ふく太郎本部についてはこちら https://www.fukutarou.co.jp/furukawa

TOP